ランナー膝に対する鍼灸治療。

ランナー膝に対する鍼灸治療
目次

こんにちは、ほまれ鍼灸接骨院の富本です。

ランナー膝(腸脛靭帯炎)はランニング障害の中で最も多くの人が悩まされている症状です。

(腸脛靭帯=ちょうけいじんたいと読みます。)

原因を見極めて適切な治療を行えば数回の治療で痛みは取れますが、『腸脛靭帯が硬くなっていることが原因だ!』と盲目的に思い込んで、腸脛靭帯が存在する太ももの外側ばかりマッサージしたりストレッチしても痛みは取れません。

実は、痛みのあるところに痛みの原因はありません。

この記事では、前半部分はランナー膝に関する一般的な解説を行い、後半部分ではランナー膝に対して当院で行っている治療について説明します。

ランナー膝(腸脛靭帯炎)とは?

まず、そもそも『ランナー膝とは一体何か?』というところからですが、ランナー膝は正式には腸脛靭帯炎という病態で、太腿の外側に存在する腸脛靭帯がランニングなどの繰り返しの負荷によって、膝関節の外側で大腿骨外側上顆と呼ばれる太腿の骨の出っ張りと擦れることによって発症する膝関節の代表的なスポーツ疾患の一つです。

腸脛靭帯は膝関節を伸ばしている際は、外側上顆の前側に位置していますが、膝関節を曲げていくと靭帯自体が後方に移動していき、ちょうど膝関節が30°〜45°ほど曲がる際に外側上顆を乗り越えることとなり、腸脛靭帯に最も大きな負荷がかかります。

腸脛靭帯炎が起こる場所

日常生活で反復される程度の負荷であれば問題になることはほとんどありませんが、走ったり、自転車を漕いだりと頻繁に膝を曲げ伸ばしするスポーツで比較的発症しやすいスポーツ疾患の一つです。

自転車競技でもランナー膝は多く見られます。

自分の膝の痛みがランナー膝(腸脛靭帯炎)なのかどうかを判断する際には主にグラスピングテストと呼ばれるテスト方法を用います。

膝の外側のやや上側に指を押し当てて、指で圧をかけたまま膝関節を曲げ伸ばしします。

指を当てている部分に痛みがあれば陽性、痛みがなければ陰性です。

非常に簡易的な検査ですが、腸脛靭帯炎の場合はほぼ確実に痛みが出るのと、自分一人でも簡単に行えることから、お勧めのテスト方法の一つです。

痛みがある人はやってみましょう。

ランナー膝が起こる原因

基本的には使い過ぎによって発症する痛みなので、痛み自体は練習やトレーニングをしばらく休止することによって消失しますが、実は膝関節そのものに原因があることは非常に稀で、ほとんどの場合は股関節や足関節の硬さなどといった、他の部分からくる問題によって膝関節に負荷が集中していることが多く、その問題を解決しない限りは症状がなかなか改善しないのがランナー膝の特徴です。

ランナー膝は主に以下の3つの原因によって発症します。

  • お尻の筋肉の硬さ
  • 足首周りの硬さによる影響
  • ランニングの総合的な負荷による問題

それぞれ順番に見ていきましょう。

お尻の筋肉の硬さの影響

腸脛靭帯は骨盤の前側にある上前腸骨棘から始まる大腿筋膜張筋から発生し、太腿の外側を下り、ガーディー結節と呼ばれる脛の骨の外側の部分にまで続きます。

お尻の筋肉と腸脛靭帯の関係

(画像青色の部分が腸脛靭帯です。)

腸脛靭帯自体は名前の通り靭帯なので柔軟性はありません。

ですので、腸脛靭帯の硬さというのは腸脛靭帯そのものの硬さではなく、あくまでも腸脛靭帯の始まりの部分である大臀筋や中臀筋、大腿筋膜張筋などのお尻の筋肉の硬さのことを意味しています。

なんらかの原因によってお尻の筋肉に硬さなどの問題が生じている場合、その硬さが歩行時やランニング時などに腸脛靭帯への負担を高めることになってしまい膝関節外側の痛みを作り出してしまいます。

大臀筋と腸脛靭帯の関係

(薄い青色になっているのがお尻の筋肉。お尻の大臀筋や中臀筋は腸脛靭帯と連絡しています。)

代表的なパターンとして多く見られるのがデスクワークの仕事に従事している方々です。

デスクワークで毎日7〜8時間も座った状態でいると、股関節は常に曲がっている状態なので、腸腰筋や大腿筋膜張筋といった股関節を曲げる筋肉が非常に硬くなってしまいます。

人間の体には拮抗抑制という仕組みがあり、硬くなってしまった筋肉と逆の働きをする筋肉は100%の力発揮がしづらい状態になってしまいますので、この場合で言うと、股関節を曲げる筋肉である腸腰筋などが硬くなってしまった影響によって、腸腰筋の拮抗筋である大臀筋に抑制がかかってしまい、股関節伸展の動作が行いにくくなってしまいます。

また、同じ原因で内転筋が硬くなってしまうことによって、その拮抗筋である中臀筋に抑制がかかり、股関節外転動作を行う際に中臀筋に上手く力を入れることができなくなってしまいます。

結果として股関節外転動作を行う際に中臀筋の代わりに大腿筋膜張筋を過剰に使用することとなってしまい、膝関節外側に痛みが発生しやすくなります。

足首周りの硬さによる影響

どこか関節が痛い場合、その痛みの原因は痛みがある場所の上下にあることが多いです。

先程説明した股関節は膝の上側ですね。

では膝の下はと言うと?

足関節がありますね。

足関節の硬さもランナー膝の原因になります。

足、膝、股関節などの下肢の関節は運動したり体重を支えたりする場合、決して一つ一つが独立して動いているわけではなく、それぞれが強調して助け合いながら動いています。

この足関節の動きの悪さによって膝の痛みが発生していることも多々あります。

もちろんランナー膝も例外ではありません。

ランニングの際、股関節、膝関節、足関節は前方に進むための推進力を発揮するのと、身体にかかる荷重を分散するためにそれぞれ動きますが、この際に足関節がうまく力を出せないと膝関節を必要以上に曲げることになり結果として膝への負担が増えます。

細かい一つ一つの関節の動きまで説明すると、キリがないので割愛しますが、要は過去の捻挫の経験などにより足首周りが硬くなっている場合、ランニング動作で足関節を曲げる際に十分足首を曲げることができず、その分、膝関節を余計に曲げることとなってしまいます。

一度だけなら大きな影響はありませんが、長距離を走るランニングなどの場合は、繰り返しの負荷が膝にかかり続けることになるので、結果として痛みを作り出してしまう原因となります。

一般的に、足関節の捻挫は軽く考えられがちですから、小さい頃に捻挫したことなど忘れている人も多いですが、意外とその怪我の影響を引きずっている人も多々います。

また、最近はデスクワークに加えてリモートワークも主流となってきて、これまで以上に運動不足に陥っている人も多くいるようです。

関節は特に怪我をしてなくても使わなければ硬くなります。

通勤時間がなくなった影響によって歩くことも少なくなると、足首は硬くなる一方です。

このように意外なところに原因が潜んでいることも多々あります。

オーバーワークによる影響

単純に使い過ぎが原因となって痛みが出ている場合も少なくありません。

ランナー膝をはじめとした、ランニングによる脚の痛みは様々ありますが、そのどれもが使いすぎ(オーバーユース)による痛みであり、やはりランニングシーズンが盛んになる冬の時期に来院が増えます。

逆にいうと、シーズンが終わって、少しランナーの方が練習のペースを落としがちになる春以降はランナー膝で来院する人の数も減る傾向にあります。

『タイムを伸ばす』、『まずは完走する』など、ランナーによって目標は様々ですが、やはり走行距離が増えるとどうしてもランニング障害は発生しやすくなりますので、痛みや違和感が出る手前くらいの、ちょっと物足りないくらいの段階で毎回の練習を終えることが、痛みなく長く走り続けることができるポイントです。

治療においても、走りながら治療を進めていく場合と、一旦練習を休止して治療に専念する場合とであれば、後者の方が明らかに治りも早いので、早期の回復を目指す場合は、思い切って休息を取ることも大切な点です。

ランナー膝に対する鍼治療

当院ではランナー膝の治療に対しては、専門的な研修を受けた鍼灸師のみが鍼治療を担当します。

中臀筋や大腿筋膜張筋といった、ランナー膝で硬くなりやすいお尻の筋肉に対して、長鍼を用いて的確に刺激を届かせます。

また、先述したように、ランナー膝の症状でお悩みの方の多くは腰や股関節、足首にも問題が出ていることがほとんどなので、膝だけでなく、身体全体を診て治療を行います。

鍼治療はランナー膝を始めとしたランニングによる足の痛みに対して非常に効果的な治療の一つです。

ランナー膝に対する鍼灸治療

また、深鍼での鍼治療は専門的な研修を受けた鍼灸師のみが行える鍼治療の方法です。

ランナー膝の場合、軽度であれば数回(3〜5回)の治療で痛みが取れることがほとんどです。

なかなか改善が見られないランナー膝でお悩みの方は是非一度ご相談ください。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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