こんにちは、大阪府豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。
今回は足関節捻挫の後遺症に対する鍼治療について書きます。
一般的な足首の捻挫に対する鍼治療ではなく、あくまでも『足関節捻挫の後遺症』についてです。
というのも、足関節の捻挫が多いことは言わずもがなですが、
(足関節捻挫は全スポーツにおける怪我発生率の第一位)
足関節捻挫があまりにもポピュラーな怪我すぎて、捻挫を軽視するがあまり適切な処置を行わないままスポーツや日常生活に復帰した結果、後々、足首に慢性的な痛みを抱えている人は非常に多いのです。
足関節捻挫の後遺症の代表的な症状は以下の通りです。
足関節捻挫の後遺症の特徴
- 捻挫して以降、足首に痛みや違和感がある。
- 足首がグラグラする。
- 足首が不安定な感じがする。
- 捻挫した側の膝や股関節が痛い。
捻挫を経験したことがある人で、これらの症状に当てはまる人は、足関節捻挫の後遺症によって痛みが出現しているかもしれません。
何度も繰り返した捻挫の結果、関節の構造が破綻している場合は難しいですが、関節周囲の筋肉や腱などが慢性的に痛みを引き起こしているパターンであれば鍼治療で適切な刺激を行うことで改善が期待できます。
是非最後までお読みください。
目次
足関節捻挫の後遺症が発生する理由
足関節捻挫の後遺症が発生する理由は以下の2つです。
足関節捻挫の後遺症が発生する理由
- 不十分な固定期間
- 固定期間中の足関節周囲組織の癒着
不十分な固定期間
足関節捻挫は数ある怪我の中でも最も多い怪我です。
軽い程度のものを含めると、生きていれば誰しもが一度は経験する怪我の一つです。
あまりにもポピュラーな怪我であるが故に、
『放っておけば治る』
『固定しなくても大丈夫』
といったような誤解をされている場合が多く、怪我をしたにも関わらず、充分な治療が行われていない問題があります。
病院に行かない家庭だったり、厳しい部活動などで練習を休むことができない学生などに多い原因の一つです。
捻挫くらいで休んでいられないと考え、固定をせずにすぐに練習に復帰してしまい、結果的に長期的に問題を抱える人をこれまで沢山見てきました。
靭帯の役割は関節を安定させることですので、捻挫すると関節が不安定な状態となります。
靭帯が役割を果たせなくなると、周囲の筋肉が関節を安定させるために力を発揮することとなるのですが、本来であれば行う必要のない負担を筋肉に強いることになりますので、結果的に靭帯のみならず筋肉にも負担がかかり痛みや違和感が出現します。
長すぎる固定による弊害
固定を長期間行いすぎることによって発生する痛みもあります。
足関節捻挫は損傷の程度によって、痛めた靭帯の種類が異なりますが、最も損傷することが多い前距腓靭帯を痛めた場合は足関節を90°の位置で足首を固定します。
この位置で足首を固定することで、損傷した靭帯が癒合しやすくなるのですが、固定期間が必要以上に長かったり、固定期間中に足首や足の指の運動などを全く行わなかった場合などは、足首周囲の筋肉や腱、それらを支持する伸筋支帯などの組織の間で癒着が発生し、結果的に足首に可動域の制限を生じる場合があります。
足関節捻挫の後遺症でよくある症状
急性の足関節捻挫では、足首の外側がズキズキと痛んだり、足に体重を乗せることができないといった典型的な症状が見られますが、慢性の足関節捻挫の後遺症では以下のような症状がよく見られます。
足関節捻挫の後遺症でよくある症状
- 足首がぐらぐらする
- 足首の外側を押さえると痛い
- 前側に踏み込むと足首が詰まる感じがする
- 足首の可動域が狭い
- 立っている際の足の形に左右差がある
- 腓骨筋に力を入れると痛い
中でも特に頻繁に見られるのが、足首前方の詰まりです。
ランジのような動作を行った際に、足首の前方に詰まったような感覚を訴える人が多くいます。
本来であれば、足首を背屈する際に、距骨という骨が後方にずれる必要があるのですが、先述した長期間の固定や足関節の不安定な状態などの原因によって、距骨の動きに制限が生じた結果、足関節の動きにも影響が出てしまい、結果的に足だけでなく、膝や股関節、ひいては腰といった体幹部分にまで負担が生じてしまいます。
足関節捻挫の後遺症に対する鍼治療
急性期の足関節捻挫であれば、適切な固定と超音波治療などを併用することによって早期の回復が見込めますが、痛みが慢性化している場合は、それらの治療では効果が見込めない場合も少なくありません。
整体やカイロプラクティックなどで足関節の調整を謳っている治療院もありますが、個人的には足首周囲に生じている筋肉や腱の癒着の解消には鍼治療が非常におすすめです。
足関節捻挫の後遺症に対して鍼をする場合、狙うポイントは以下の3つです。
足関節捻挫の後遺症で鍼をするポイント
- 短腓骨筋
- 短腓骨筋と長母趾屈筋の間
- 下腿の前面下部
短腓骨筋
短腓骨筋は足首の外側の安定性を司っている筋肉です。
足首外側の痛みと非常に密接に関わっている筋肉で、捻挫を繰り返している場合、痛めてしまった靭帯の代わりにこの筋肉が足首の安定性を高める役割を担うことから、外側靭帯の機能が破綻している足関節捻挫の後遺症の場合、この筋肉を過剰に使用することとなり痛みが出現します。
特にランナーなど、長時間走り続けていると足首外側に痛みと違和感が出現するようなタイプの痛みに効果的です。
以下の写真は当院で実際に行なっている短腓骨筋に対する鍼治療の様子です。
腓骨の後方から、筋肉全体に刺激が行くように鍼を行います。
足関節捻挫の痛みかと思いきや、実は短腓骨筋炎による痛みだったというパターンは非常に多いです。
短腓骨筋炎は当院で行なっている鍼治療であれば数回の治療で良くなります。
詳しくは、短腓骨筋炎に対する鍼治療をご参照ください。
短腓骨筋と長母趾屈筋の間
短腓骨筋と長母趾屈筋の間は足関節捻挫の後遺症において非常に硬さが出現しやすいポイントです。
長母趾屈筋は足首の真後ろを走る筋肉で、短腓骨筋と隣り合わせで存在しています。
長期間の固定などの影響で、二つの筋肉の間の滑走性が低下することで足関節の可動域に制限が生じている場合があります。
足関節は背屈という動作を行う際に、距骨が後方に滑る必要がありますが、
この際に、距骨の後方に存在する長母趾屈筋が硬いと足関節の背屈運動の強い制限となります。
この部位への鍼治療は、足関節を背屈した際に足首の前方に詰まり感があるような場合に非常に有効です。
以下の写真は、足関節捻挫の後遺症で、足首を背屈した際に足首の前方につまり感がある患者に対する鍼治療の実際の様子です。
短腓骨筋と長母趾屈筋と、それらの筋肉の間を狙って鍼をしています。
下腿の前面下部
足関節捻挫の後遺症の患者さんに共通するポイントの三つ目が、下腿前面下部の硬さです。
その中でも特に硬くなっている筋肉が第3腓骨筋です。
非常にマイナーで大きな筋肉ではありませんが、捻挫を複数回繰り返している方の多くはこの部分に強い緊張が見られます。
基本的には、先に挙げた二つのポイントに鍼をすることによって、多くの場合で痛みや可動域制限に改善が見られますが、数回行って変化がない場合はこちらに鍼を行います。
鍼治療+各種のトレーニングが必要
以上が足関節捻挫の後遺症で来院された場合に鍼を行う代表的な治療部位となります。
痛めてからの期間や後遺症の内容によって、鍼を行う方法や場所はそれぞれ異なりますが、上記の3ヶ所はほぼ全ての方に対して行います。
これらの部位に鍼を数回行うことによって、痛みや可動域制限に改善が見られますが、足関節捻挫の後遺症を完全に解消するためには、鍼治療と並行して足首周囲の筋力トレーニングが必要です。
足関節捻挫を複数回繰り返している方のほとんどは、足首や足の指を動かす筋肉を上手く使えていないので、適宜、トレーニングやセルフケアの指導も行い、スポーツ活動や日常生活への復帰をお手伝いさせていただきます。
当院では足関節捻挫の後遺症で来院された患者様には鍼治療で痛みや可動域の改善を行うだけでなく、必要となるトレーニングの指導やトレーニングメニューの作成まで実施して、なるべく早く日常生活やスポーツ活動に復帰できるようにサポートを行っています。
まとめ
この記事では足関節捻挫の後遺症に対する鍼治療についてまとめました。
先述したように、足関節の捻挫はポピュラーである分、最も軽視されがちな症状の一つです。
適切な治療を行わなければ、足首に痛みや違和感などの問題が出るだけでなく、膝関節や股関節など様々な部位に負担がかかります。
足関節捻挫の後遺症による痛みや違和感は放置していて良くなる症状ではありませんので、長い期間悩まされている人は早めに治療を行うことが大切です。
足首を捻挫した後のなかなか取れない痛みなどでお悩みの方は是非一度当院にご相談ください。
その他、ランナーやバレリーナなど足首周辺のトラブルに関しては以下の記事をご参照ください。