ドケルバン腱鞘炎に対する鍼治療

2024.05.24

腱鞘炎に対する鍼治療
目次

こんにちは、大阪府豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。

今回は腱鞘炎に対する鍼治療についてです。

腱鞘炎の中でも最も多い、親指の付け根が痛むドケルバン病について書きます。

日常生活や仕事、スポーツ、趣味など様々な原因において発症する腱鞘炎

これまでは振動する工具を使用する大工さんや重いフライパンを日常的に使用する料理人、育児で子供を頻繁に抱っこする女性といったように、特定の動作を頻繁に繰り返す人に多かった症状ですが、最近ではスマホやパソコンの普及によって、年代や生活習慣を問わずに多くの人が悩まされるようになってきています。

スマホの使い過ぎによる腱鞘炎が増えています。

治療法としては、患部を安静にするためのテーピングやサポーター、ストレッチなどが代表的なものとして知られていますが、なかなか良くならないと悩まれている人が多いのが現実です。

そもそも、手は日常生活において酷使される場所ですから完全に安静にするのが難しいという側面もあります。

そのような理由から治りにくい疾患として有名な腱鞘炎ですが、鍼治療は腱鞘炎に対して非常に効果が期待できる治療であることが知られています。

腱鞘炎に鍼が効くの?

なぜ腱鞘炎に対して鍼治療が有効なの?

腱鞘炎の鍼治療ってどんなことするの?

腱鞘炎に対してはどのような治療を行うの?

この記事では、上記のような腱鞘炎に対する鍼治療についての疑問についてまとめています。

腱鞘炎でお悩みの方は是非最後までお読みください。

手首の外側が痛む腱鞘炎については尺側手根伸筋腱鞘炎に対する鍼治療をご参照ください。

ドケルバン腱鞘炎に対して鍼治療が有効な理由

ドケルバン腱鞘炎に対して鍼治療は有効な治療法の一つです。

ストレッチやマッサージなどで筋肉の緊張を緩和してあげることも腱鞘炎の痛みを軽減させるのに有効ではありますが、鍼治療であれば腱鞘炎を引き起こしている原因となっている筋肉や腱にピンポイントかつ直接刺激を入れることが可能であり、マッサージなどと比べても非常に高い効果が期待できます。

ドケルバン腱鞘炎の場合、痛みが発生するのは親指の付け根の当たり(下の画像で赤丸に囲まれている部分)ですが、この場所には筋肉が存在しておらず腱が走行しています。

ドケルバン腱鞘炎において痛みが出る部位

ここを指を使って直接マッサージや指圧で刺激すると、炎症している場所を押さえ付けることとなってしまい、逆に痛みを強めてしまう可能性がありますが、鍼であれば損傷している組織に無駄な刺激を入れることなく、傷んでいる組織に対して侵襲刺激を加えることが可能です。

鍼治療は対象となる組織に対してミクロのレベルで傷をつけ、身体がその傷を治そうとした結果、組織の修復の過程で痛みが軽減します。

これは鍼という非常に細い物で患部に刺激を加えていることから、無駄な痛みを作ることなく、回復を促すことが可能ですが、ストレッチやマッサージの場合では炎症している組織に必要以上に刺激を入れてしまうことも少なくなく、結果的に施術後に痛みを強めてしまう場合も少なくありません。

当院で行っている腱鞘炎に対する鍼治療について

腱鞘炎の治療で頻繁に使用するツボは以下の6つです。

赤色表記は当院でよく使用するツボです。

  • 太淵(たいえん)
  • 合谷(ごうこく)
  • 曲池(きょくち)
  • 手三里(てさんり)
  • 上廉(じょうれん)
  • 下廉(げれん)

太淵はドケルバン腱鞘炎の際に痛みが出現するポイントと一致しています。

太淵と合谷

合谷は歯の痛みや顔の痛みに効くツボとして知られていますが、指や手の痛みに対しても非常に効果のあるツボの一つです。

当院ではこの部位に対しては鍼治療と共に微弱電流も使用して、傷んでいる組織の早期の回復を促す施術を行います。

微弱電流は傷んでいる組織の修復を早める効果が期待できる電気治療で、昨今、多くのアスリートなどが日常的に疲労のケアとして取り入れている治療です。

鍼治療と組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。

また、腱鞘炎では多くの場合、前腕の筋肉にも強い緊張や疲労が現れていることから手首だけでなく前腕に対しても鍼を行います。

曲池、手三里、上廉、下廉は前腕の伸筋群の筋肉の緊張が現れやすい部位であり、腱鞘炎の治療でも頻繁に使用する代表的なツボです。

手三里と上廉

テニス肘の治療などでも良く使用するツボですが、手首の腱鞘炎に対しても効果的です。

この部位に鍼をすると、ズシンと重だるいような鍼特有の感覚が出現します。

前腕の筋肉に対しては鍼治療に加えて微弱電流や低周波治療器も使用して筋肉の緊張の緩和を行います。

以下は腱鞘炎に対して合谷を中心に実際に鍼治療を行なっている様子です。

腱鞘炎に対する鍼治療

また、腱鞘炎では手首の痛みを庇うあまりに、肘や肩など他の部分を過剰に動かすことが増え、結果的に手首以外にも痛みが出ている方も少なくありませんので、当院では腱鞘炎であっても手や肘だけに鍼をするのではなく、首から肩〜背中の筋肉に対して全体的に施術を行なっています。

肩や腕の筋肉と手首の筋肉は連絡しており、腱鞘炎患者の多くの人が首肩コリにも悩まされています。

肩周辺の筋肉の緊張が緩和することで結果的に手首の痛みの軽減にも繋がります。

まとめ

以上が腱鞘炎に対する鍼治療です。

腱鞘炎は治りにくい症状として有名です。

また、痛みを抱えたまま生活を続けると、手首を庇う動きが増えてしまい、結果として肘や肩などの他の部分に痛みが発生することも少なくありません。

サポーターやテーピングといった保存療法で効果が見られない場合は是非鍼治療を試してみてください。

発症してからある程度の期間が経っている場合、一度だけの治療で劇的に改善することは難しいですが、数回(3〜5回程度)続けて鍼をすることで、痛みが緩和し日常生活や仕事を楽に行えるようになります。

手首の小指側の腱鞘炎については尺側手根伸筋腱鞘炎に対する鍼治療をご参照ください。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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