梨状筋症候群に対する鍼灸治療

2024.03.16

梨状筋症候群に対する鍼治療
目次

こんにちは、大阪府豊中市ほまれ鍼灸接骨院の富本です。

今回のブログは症例報告です。

梨状筋症候群で脚に痛みと痺れが出ていた患者さんに対して、梨状筋や大腰筋を中心に鍼治療を行ったところ著明な効果が得られたので簡単にまとめたいと思います。

『〇〇の症状がある時、どのくらいの頻度でどのくらいの回数の通院が必要ですか?』という質問をよく受けるので一つの参考にしていただければと思います。

初回の治療から、症状の大幅な軽減が見られるようになった6回目の治療までの経過をまとめています。

梨状筋症候群や坐骨神経痛についての詳しい解説は坐骨神経痛に対する鍼灸治療をご参照ください。

✳︎写真は全て患者様からの許可を得て載せています。

患者基本情報

  • 50代男性
  • デスクワーク
    (1日7時間座りっぱなし)
  • ランニングが趣味
    時にマラソン大会にも出場
  • 既往歴 変形性頚椎症および変形性腰椎症
  • 過去にギックリ腰を数回経験している

腰から左の足にかけての坐骨神経痛ですが、痺れが出る場所がごく一部に限られており、足の親指の付け根の部分に痺れがある状態でした。

初回

2週間前より痛みが出現したことから整形外科を受診してMRI検査を行ったところ、腰椎椎間板ヘルニアと診断。

症状は左のお尻から左脚全体の痺れ(特に左の足の親指に強い痺れあり)

実際に痺れが出ていた場所

一般的に病院でヘルニアと診断を受けた場合でも、その症状が本当にヘルニアが原因となっているのかは疑いの目を向ける必要があります。

ヘルニアであれば、腰を丸めると痛みや痺れが強くなりますが、こちらの患者さんの場合、前屈みを行ったり、三角座りのような姿勢を取ったりと、腰に丸くなるストレスを加えてみても特に症状が強くなったりする様子は見られませんでした。

ヘルニアで陽性所見が見られる、そのほかの検査も問題がなかったので、実際の痛みはヘルニアではない部分から来ているのではないかと判断し、腰や股関節周りの検査を行ったところ、お尻の筋肉に明らかな硬さが存在していました。

特にお尻の梨状筋にストレスをかける検査を行ったところ、明らかに左右差が存在しているのに加え、普段の症状が再現されたことから、お尻の筋肉の緊張によって坐骨神経が圧迫を受けて発症する坐骨神経痛と考え鍼治療を行っていくことになりました。

鍼治療自体は過去に経験があり、響きの感覚も苦手ではないとのことで初回から効果を出すためにある程度強めにしっかりと患部に響かせる治療を行いました。

以下は実際の鍼治療の様子です。

梨状筋症候群に対する実際の鍼治療の様子

鍼を行った場所は以下の通りです。

  • 多裂筋
  • 大腰筋
  • 中臀筋
  • 梨状筋
  • ハムストリング
  • 腓骨筋

(✳︎ツボの名前を記載してもわかりにくいと思いますので筋肉名で記載しています。)

これらの部位に鍼を行うのに加えて、大腰筋と梨状筋の鍼に対して鍼通電器具ピコリナを用いて低周波鍼通電療法を20分間行いました。

初回治療終了後、即時的な効果として鍼を抜いた時に痺れの症状は大幅な軽減が得られました。

症状が落ち着くまでのしばらくの間、3日に1回の治療頻度を提案してこの日は終了。

2回目

初回治療の5日後に来院。

前回の後、当日から翌日の朝まで、治療効果が持続しほとんど痺れを感じなかったが、翌日、出社して一日中座りっぱなしで過ごした後に再び痺れが出現。

しかし治療前はお尻から下肢全体に及んでいた痺れの範囲が、この時点で、太ももの裏から外あたりから足の親指までになっており、初回に比べると痺れを感じる部分が狭くなっているようです。

お尻の筋肉を押さえた時の痛みも減少しています。

長時間座りっぱなしの後に再度痛みは出現したものの、検査の結果などから経過良好と判断して前回と同じ部位に鍼治療を行いました。

20分間置鍼するのと同時にピコリナでの鍼通電を実施。

お尻の梨状筋に刺した際はズーンと強い響きが得られます。

仕事が忙しく頻繁に通院するのが難しいとのことで週に1回のペースで治療を続けることに。

3回目

2回目の5日後に来院。

前回と同じく治療後は大幅な症状の改善を体感できるが、1回目、2回目の時と比べると効きが悪かったような気もするとのこと。

仕事で座りっぱなしになると相変わらず痛みと痺れが出る状態のようです。

ただ、痺れの範囲自体はさらに減少しており、左膝の下外側あたりから足の親指にかけて出現するようで、2回目の時点よりは症状の改善が見られます。

同じ部位に鍼治療を実施。

20分間ピコリナでの鍼通電を行って終了。

4回目

仕事が忙しかったようで2週間以上感覚が空いて来院。

少し感覚は空いたものの、酷い痺れが出るようなことはなくなっている。

痺れの範囲も狭くなってきており親指の周囲のみとなりました。

しかし座りっぱなしが続くと症状がキツくなることには変わり無し。

同じく坐骨神経痛のポイントに対して鍼治療を実施。

鍼をする際の筋肉の硬さや緊張感は明らかに軽減しています。

5回目

4日後に来院。

朝起きて20分くらい座っていると左の足の親指の周囲にだけ痺れが出現する。

仕事中の座りっぱなしでも症状は出現するが、痺れの範囲と程度は最初と比べると非常に小さくなっている。

腰から左のお尻を中心に鍼治療を実施。

左の大腰筋を刺激した際に、普段感じている痺れが再現される感覚あり。

6回目

24日後に来院。

痺れは大幅に軽減して10段階で1程度。

『久しぶりですね』と声をかけると、『痛みが随分落ち着いていたので来ていなかった。』と一言。

各種検査は問題なく、お尻の筋肉を抑えてみても痛みはなく良好です。

痺れの程度は0とはいかず1程度は残存している様子。

今回も同じく大腰筋と梨状筋を中心に鍼治療を行い6回目の治療が終了しました。

まとめ

坐骨神経痛にはヘルニア由来、背骨の変形由来、筋肉の緊張による絞扼由来、といったように様々なタイプが存在します。

レントゲンなどの画像検査は非常に重要で、痛みがある際はまず病院に行くことが正しい選択ですが、治療という観点では、病院ではヘルニアや坐骨神経痛に対して、湿布や痛み止めを処方するだけだったり、安静にするよう促されるだけだったり、なかなか効果がないことも事実かと思います。

例えヘルニアと診断された場合であっても、その痛みが本当にヘルニアが由来で発生しているのかは100%断言できるものではなく、ヘルニアと診断された方が実は原因が他にあった場合も少なくありません。

事実、今回の患者様も病院で検査を受けヘルニアと診断されたものの、リハビリなどでは大きな変化が見られなかったことから鍼灸治療を行うこととなり、6回目にして症状の改善を得ることができました。

現在は再発の予防を目的に当初よりも間隔を空けての通院されています。

腰痛や神経痛は鍼灸治療の守備範囲の一つなので、今回のモデルケースを参考にしていただき、なかなか治らない慢性腰痛や坐骨神経痛でお悩みの方は是非一度ご相談頂ければと思います。

また当院では深鍼の専門的な研修を受けた鍼灸師が鍼灸治療を担当する為、他の鍼灸院で治療を受けたものの効果を感じなかった場合や、効果が出てくるような期待が抱けなかったという方にもご来院いただければと思います。

参考になれば幸いです。

坐骨神経痛やその他の腰痛については腰痛に対する鍼灸治療をご参照ください。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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