こんにちは、大阪府豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。
今回は小指側の手首の腱鞘炎である尺側手根伸筋腱腱鞘炎について書きます。
しゃくそくしゅこんしんきんけんしょうえんと読みます。
早口言葉みたいですね。
腱鞘炎と聞くと親指の付け根が痛くなるドケルバン病を想像される方が多いですが、実はそれと同じか、それ以上に多くの人が悩まされているのが今回取り上げる小指側の腱鞘炎です。
一般的な腱鞘炎であるド・ケルバン病についてはドケルバン腱鞘炎に対する鍼治療をご参照ください。
尺側手根伸筋腱鞘炎は手首の痛みとして有名なTFCC損傷と痛みの場所が似ていることから誤解されることも多い症状です。
TFCC損傷では手首の外側に痛みが出現しますが、尺側手根伸筋腱鞘炎では前腕の手首近くの外側辺りに痛みが出現します。
テニスや卓球などの手首を酷使するラケットスポーツや、合気道などで頻発する怪我ですが、日常生活における負荷でも発症する場合があります。
TFCC損傷と診断され治療していたがなかなか良くならず、再度検査をしたところ実は尺側手根伸筋の腱鞘炎だったということが少なくなく、治療に難渋することが多い症状です。
目次
尺側手根伸筋腱腱鞘炎とは
尺側手根伸筋は手の甲側の前腕に存在する筋肉です。
尺側手根伸筋腱の腱鞘炎では、手首を返す動きを行うことによって痛みが出現します。
立ち上がる際に手をついた際に痛みが出現することも特徴の一つです。
ただし、これらはどれもTFCC損傷でも痛みが出現する動作ですので、鑑別が非常に難しい傾向にあり、これが尺側手根伸筋腱腱鞘炎の痛みが長引いてしまう一つのポイントでもあります。
TFCC損傷であっても、前腕の部分に痛みが出現することもあることから、痛みが出現する場所や動作、圧痛などを細かく確認して痛んでいる組織を特定することが大切です。
尺側手根伸筋腱腱鞘炎に対する鍼治療
尺側手根伸筋の腱鞘炎に対する鍼治療では、痛みが出ている手首周辺に加えて、前腕の外側に存在する手関節の伸筋群に対して鍼をします。
以下の画像は尺側手根伸筋の隣に存在する小指を伸ばす小指伸筋です。
尺側手根伸筋腱鞘炎では、この筋肉に緊張や圧痛が見られることも多いです。
尺側手根伸筋に鍼をするとズシンと重だるいような鍼特有の響きの感覚が出現します。
当院で行っている中国鍼を用いた治療では、この響きの感覚が重要で、響きの感覚が普段感じている痛みと場所や感覚が似ているほど高い治療効果が期待できます。
写真は手首外側に痛みを訴える患者さんに対する鍼治療の様子で、尺側手根伸筋に鍼をしたところ、普段感じているようなズシンと痛みが再現される感覚が出現しました。
鍼をして響きの感覚が得られれば、鍼に微弱電流を流しながら20分〜30分ほどそのまま休んでもらいます。
微弱電流は昨今、アスリートなどがセルフケアでこぞって使用している電気治療です。
生体に流れている電気と同じ程度の弱い電気刺激を加えることで、傷んでいる組織の早期修復が期待できます。
鍼治療だけを行う場合と比べて、傷んでいる組織の修復をより早く高めるような効果が期待できます。
また、手首や肘の痛みは使い過ぎによって発症することがほとんどですが、これらの部位に痛みを抱えている方のほとんどが肩や首の筋肉が過度に緊張しており、それによって腕を動かす際に負荷が肘や手首に集中していることが多いです。
ですので、当院では腱鞘炎や肘の痛みであっても、首〜肩、背中の筋肉に対しても必ず鍼を行います。
肩周りの筋肉が緩むことによって、手を動かす際に腕全体を連動して動かすことが可能となり、それにより手首にかかる負担を軽減することが可能です。
まとめ
尺側手根伸筋の緊張を緩めてあげることで痛みは落ち着くので鍼治療は非常に有効な治療法です。
痛めてからの期間にもよりますが、多くの場合は3〜5回程度の治療で痛みは和らぎます。
1回目の治療で痛みが2〜3割減少すれば5回程度繰り返し治療することで良くなります。
しかし治療自体はそれほど難しいものではありませんが、手首は日常生活において頻繁に使用する部位であり、患部を安静にすることが困難な為、長期間痛みに悩まされている人が多い症状の一つです。
初期はサポーターやテーピングを使用して手首に負担がかからないようにすることも大切です。
また立ち上がる際に手を着く時は、手首を返した状態で体重をかけるのではなく、拳を立てて立ち上がるようにすれば無駄な痛みを作らずに済みます。
手首周辺の痛みは一度良くなった後でも再発することが多い傾向にあるので、普段から手首に負担がかからないよう身体の使い方を工夫する必要があります。
また、手首が痛いまま放置していると、肘や肩に慢性的な負担が蓄積し、テニス肘や肩関節の痛みが出現する恐れもあります。
手首の痛みで悩まれている方は是非一度鍼治療を試してみてください。
親指側の腱鞘炎についてはドケルバン腱鞘炎に対する鍼治療をご参照ください。