こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。
今回は頚椎症性神経根症に対する鍼治療に関する内容です。
頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)以下…神経根症とします。
神経根症は加齢に伴う頚椎の変形を基盤として発症する疾患なので、治らないと思われている人も多いようですが決してそんなことはありません。

病院で加齢が原因と言われたのに鍼で治るの?

何回くらい(どれくらいの期間)治療に通えばいいの?

神経根症に対する鍼ってどんな治療をするの?
当院に来院された患者さんから上記のような質問をよく受けますので、同じく首の痛みで悩んでいる方の参考になればと思い、神経根症に対する鍼治療のアレコレについて当院で実際に行なっている鍼治療の内容まで簡単ではありますが解説しています。
ブロック注射やリハビリで改善しなかった場合であっても鍼治療で効果は期待できますので、
神経根症をはじめとする首〜腕の痛みでお悩みの方は是非最後までお読みください。
神経根症とは?
頚椎神経根症とは、何らかの原因によって、首の神経が圧迫を受けることによって発生する首から肩〜腕にまで痛みや痺れなどが出現する病気です。
加齢による影響が多いので、基本的には若い人よりも40〜50代以降の中高年に多く発症します。
この何らかの原因の中で、最も多いのが頚椎の加齢による変形です。

変形によって骨に棘(とげ)ができたり、関節や靭帯が分厚くなったりすることで、椎間孔(ついかんこう)と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、椎間孔内で神経が圧迫されることによって、神経に炎症が起きたり神経周囲に浮腫が生じることによって発症します。
障害神経高位による痛みの場所の分類
首の神経は、首の骨の間から出ており全部で8つの神経が存在します。
このうち神経根症が発症するのは主にC5〜8番の神経で、ざっくりと以下のように分類できます。
・障害神経根の高さによる痛みの範囲の分別
- C5〜6 肩甲骨の上側〜肩関節の前方あたり
- C6〜7 肩甲骨の上側〜内側〜腕の親指側
- C7〜8 肩甲骨の外側〜腕の小指側

障害された神経の高さ(位置)によって痛みや痺れが出現する範囲が決まってきますが、場合によっては、複数の高さの神経が障害されている場合もあり、上記の部位のほぼ全てに痛みなどが出現する場合も少なくありません。
どのタイプにおいても、上の画像で緑色で囲まれている肩甲骨の上側あたりには痛みが出ている場合が多いです。
腕に痛みや痺れが出ている場合は、出ている場所によって障害されている首の神経の場所がある程度予想できます。
逆に肩や腕には痛みが出ていないものの、首や肩甲骨の上側だけ痛い場合もありますが、その場合は神経根症以外の症状の可能性もありますので、徒手検査などによって痛みの原因を見極める必要があります。
似た範囲に痛みや痺れが出る代表的な症状は胸郭出口症候群であり、適切な検査を行えば見誤ることは少ないですが、場合によっては神経根症と胸郭出口症候群を併発していることもありますので、とにかく痛みの原因を正確に見極める必要があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
| 頚椎神経根症 | 胸郭出口症候群 | |
| 好発年齢 | 40〜50代の中高年男性 | 10〜30代の若年女性 |
| 原因 | 加齢による変形など | 姿勢不良や日常生活動作 |
| 悪化因子 | 首の動きによって悪化 | 腕や肩の動きによって悪化 |
| 主な症状 | 首〜肩甲骨〜腕の痛み痺れ | 腕〜肩甲骨の鈍痛、冷え痺れ |
ちなみに胸郭出口症候群にもいくつかのタイプがあるのですが、ほとんどの場合で鍼治療でスムーズに痛みや痺れは緩和されます。
胸郭出口症候群の患者さんの実際の通院例をブログにまとめていますので、そちらの方もご参照ください。↓↓
加齢による骨の変形が原因なのに鍼で治るのか?

骨の変形が原因なのに鍼で治るの?
と思われる方もいるかもしれません。
確かにそうです。
骨に鍼を刺しても変形は治りませんので、そう思われるのも無理はありませんが、変形が治らなくても症状自体は改善可能です。
というのも、実は骨が変形していると必ず神経根症が出現するかというと決してそうではなく、画像上、骨が変形していて神経が圧迫されている状態であっても首肩腕に痛みが出ていない人も少なくありません。
厳密に言えば、骨の変形などによって、神経の通り道が圧迫されることで、その神経そのものが炎症を起こしたり、神経周囲にむくみが生じることによって神経根症が発症しますので、それらの異常が生じている部位に鍼を用いて適切に刺激を加えることができれば神経根症であっても鍼治療で充分改善が可能です。
ですので、繰り返しになりますが適切な問診と徒手検査などによって障害されている神経根レベルを見極めて、その部位に適切に鍼をすることで痛みは十分コントロール可能です。
この場合、変形自体は治っていませんが、神経根症の痛みは治った(改善した)と言える状態となります。
当院での頚椎神経根症に対する鍼治療の様子。
神経根症に対しては、当院では傍神経刺(ぼうしんけいし)と神経パルスと呼ばれる二つの鍼の手法を用いて施術を実施しています。
傍神経刺とはその名の通り、神経の傍に鍼を実施する手技の一つです。
首から腕の神経は首の骨の横側に存在しているので、やや長い鍼を用いて、障害されている神経の根本にまで鍼を進める手法です。
医学博士でもあった鍼灸師の木下晴都先生が考案した手法であり、いわゆる深鍼治療と同じ目的の手法です。
一般的な鍼灸院では、皮膚表面から数ミリか1〜2センチしか鍼を刺入しませんが、この手法では4〜5センチ弱は鍼を刺入します。
(ガタイの良い男性などではさらに深く刺入する場合も少なくありません。)
この鍼手法を障害神経根に対して実施した場合には、響きの感覚が普段痛みや痺れを感じている部位に出現します。
頚椎の5番目の神経根に異常があって、肩甲骨の上部や肩の前方などに痛みが出ている場合、傍神経刺を首に実施すると肩甲骨や腕に響くような感覚が出現します。
↓実際の様子。

左側の神経根症の症状に対して、傍神経刺と神経パルスを実施しています。
傍神経刺は基本的には障害されている神経根の高さだけに実施することで十分な効果が期待できますが、神経根症を発症している人のほとんどが慢性的な首や肩のコリを抱えているので、鍼の刺激が苦手でなければ、首肩凝りも同時に治療する場合がほとんどです。
上の写真の患者さんの場合は首肩凝りの治療も同時に行なっているので、鍼の本数が少し多くなっています。
この手法だけでも充分な効果が期待できますが、この鍼にさらに電気を流すことによって、より効果的に痛みを緩和することができることが研究によってわかっています。
↓以下は明治国際医療大学の研究グループによる発表です。
一般の方にとっては少し難しい内容となりますが、ざっくりまとめると、
骨の変形によって痛みが出ていると考えられている神経根性疼痛であっても、鍼をすることで痛みを緩和することが可能であるとの研究結果が発表されています。
中でも、普通に鍼をするだけでなく、鍼に電気を流すことによって、より痛みの緩和効果が高まったことが発表されています。
また、この際に使用する電気は決して痛みを感じるような電気ではなく、トントントンと皮膚をタップされている程度の優しい刺激レベルの電気であり、痛みなく心地良い程度で受けていただけます。
この電気を流すことによって、痛みの原因に対するアプローチと同時に、痛みの感覚の伝わり方の異常に対しての治療も同時に行うことができます。
当院では、この傍神経刺と神経パルスの二つの手法を用いるのに加えて、さらに、慢性痛の速やかな解消を目的として患部以外の頭や顔、手や足にも鍼を行います。

これらの部位に鍼をすることによって、慢性痛の痛みをより効率的に低下させることが可能となります。
見た目ほど痛くなく、ほとんど感じないくらいの刺激ですので、鍼が苦手な方であっても受けていただけます。
このように当院では患部に対する局所的(根本的)な治療を行うだけでなく、痛みの感じ方に対してのアプローチも実施しておりますので、より高い鎮痛の効果を期待することができます。
治療回数の目安は発症してから3ヶ月以内の来院であれば、5回〜10回程度。
発症してから3ヶ月以上が経過している慢性痛の場合は15回くらいの通院回数が必要になる場合もありますが、多くの場合治療開始から3回以内で、ある程度症状が落ち着く傾向にあります。
豊中市で頚椎神経根症でお悩みなら
豊中市近辺で神経根症による首の痛みでお悩みの方は、是非一度ほまれ鍼灸院にご相談ください。


当院は鍼専門の鍼灸院で、今回紹介した深鍼治療をはじめ、電気鍼治療、トリガーポイント鍼治療など様々な手法を用いて日々施術を行っています。
ほまれ鍼灸院では、専門的な研修を受け、定期的に研鑽に励んでいる鍼灸師のみが施術を行います。
今回紹介した、治療法の一つである傍神経刺は少し刺激が強い手法ですが、全員に対して無理に実施しているわけではなく施術方針と治療計画を患者さんと設定してから施術方法を決定しています。
✳︎鍼の刺激が苦手な方に無理やり痛い鍼を行うことは絶対にありません。
他院で鍼を受けてみたものの、いまいち効果が実感できなかった方や、初めて鍼を受けてみることを検討されている方もお気軽にご相談ください。
そのほかの類似疾患に対する内容については以下のリンクからご確認ください。






