ぎっくり腰に対する鍼治療の実際『20代男性マッサージ師』

ぎっくり腰に対する鍼治療の実際
目次

こんにちは、大阪府豊中市ほまれ鍼灸院の富本です。

今回はぎっくり腰に対する鍼治療に関する症例報告です。

タイマッサージ師がぎっくり腰で駆け込んできたので、その様子についてまとめてみたいと思います。

鍼治療に関する不安

鍼治療って興味があるけど、どのくらい通えば良いのかわからないから不安。。

上記のような質問をよく受けるので、今回の内容を一つの参考にしていただければと思います。

今回の記事はあくまでも、実際に施術を行なって何回くらいで良くなったのかといった報告です。

ぎっくり腰に対する鍼治療について、基本的な内容について知りたい方は、ぎっくり腰に対する鍼治療をご参照ください。

患者基本情報

  • 男性
  • 20代前半
  • 職業…タイマッサージセラピスト

初回

腰が痛いと一人の患者が飛び込んできました。

聞けばタイマッサージ屋でセラピストとして働いているようですが、タイマッサージをするようになってから、中腰や前屈みの姿勢になることが多く慢性的な腰痛を抱えるようになったとのことです。

今回は2週間程前から腰に違和感があったようですが、2〜3日前に整骨院で電気治療を受けた後くらいから逆に腰痛がキツくなってきたようで鍼を受けにきました。

聞くと鍼治療は大の苦手とのことですが、もはやそんなことも言ってられないくらい腰痛が辛いようです。

まさに『背に腹はかえられぬ』とはこのことですね。

そんなことはどうでも良いとして、最初に腰痛のタイプを鑑別していきます。

箇条書きでまとめるとざっと以下の通りです。

  • 安静時の痛みはなく、身体を動かした時だけ痛い。
  • 中腰や前屈みなど、身体を前に傾けた時に痛い。
  • 痛みの場所は腰の下の方。
  • 腰を反らす際の痛みはない。
  • 横に捻ったり曲げたりする際の痛みもない。
  • お尻や鼠蹊部、脚に痺れや痛みが出ることもない。

基本的に腰痛の治療を行う場合は、腰痛の種類に関わらず、股関節の硬さや背中の硬さなどを確認する必要がありますが、なんでも20分後にはタイマッサージの予約が入っているので時間がないと言うのですぐに治療に移ることに。

おそらくマッサージを行う際の前傾姿勢を支える役割のある固有背筋が悲鳴を上げているのでしょう。

脊柱起立筋

固有背筋は抗重力筋で普段から姿勢を維持するために使われている筋肉ですが、前傾姿勢などの繰り返しの負荷によって損傷されやすい筋肉です。

前屈み姿勢は筋肉が最も緊張を強いられる伸張性収縮の形態で力を発揮することになるので、筋肉に非常に大きな負担がかかります。

脊柱起立筋や多裂筋、大腰筋、中臀筋に鍼を打っておけばすぐに治るでしょうが、先述したようにこちらの患者さんは鍼が苦手ということなので、できる限り刺激を弱めるために、少ない本数かつ、なるべく強い響きが出ないように大腰筋への鍼は控えるようにしました。

一度目の鍼治療

弱目の刺激のつもりでしたが、そこそこ響いているようで置鍼中、ずっと『う〜ん』と声を上げています。

感覚として最低でも20分ほどは置鍼した方がいいと思いましたが、如何せん時間がないとのことなので10分弱で抜きました。

抜く時にまだ鍼に筋肉がへばりついている感覚があるので、もう少し時間を置いた方が効果が高まるに違いありませんが仕方ありません。

鍼を抜いてすぐの感想としては『まだ腰に重だるいズーンとした感覚が残っているような状態』とのことです。

数時間するとより効いてくるので、可能であれば明日か明後日にでももう一度来てくださいと伝え、初回の治療は終了。

『予約があるので』と一言を残して走り去っていきました。

2回目

翌日の朝一番に来院。

聞けば昨日の治療の後、だいぶ効いてきたようで痛みの程度は10→3にまで低下しているようです。

まだ前屈みをする際には若干の痛みと違和感があるようですが、こちらも昨日よりはだいぶマシとのこと。

今日は時間があるとのことなので、疼痛部位や圧痛の確認をしたところ、どうやら固有背筋に痛みがあることは間違いありませんが、固有背筋型の腰痛が胸腰筋膜を通じて大臀筋の起始部にまで痛みを引き起こしているようです。

昨日の治療が効いたとのことなので、昨日と同じ部位に加えて、左の腸肋筋と右の大臀筋への鍼を追加し20分置鍼しました。

2回目の鍼治療

また昨日と同じように置鍼中ずっとう〜んと言っていましたが、15分ほど経過したあたりから刺激が和らいできたようで寝ていました。

時間が来たので鍼を抜きます。

直後効果の確認で、前屈みをしてもらったところ痛みは0とのこと。

抜鍼と同時に痛みが消えました。

職業柄どうしても前屈みになるのは避けられないとのことだったので、腰に負担がかかるのは仕方ないので、痛みが出る前の違和感がある状態になったらまた来てくださいと伝え2回目で治療終了となりました。

まとめ

今回は2回の治療で痛みがなくなり治療終了となりましたが、初回の治療時にまとまった時間が取れてさえいれば1回目の治療の際に痛みを完全に消失させることもできたのではないかと思います。

鍼が苦手な今回の患者は、鍼を受けている際に手汗をびっしょりかいていましたが、それでも翌日すぐに来てくれたと言うことは、それだけ効果を実感していただいたのかと思います。

基本的に鍼治療は急性の症状であればあるほど、早く良く効きます。

慢性症状であっても効きますが、どうしても長い期間痛みを感じている場合は、治療効果が現れるまでに時間がかかる場合もあります。

また、鍼治療の効果は基本的に鍼によって傷つけられた身体の組織が自己治癒力によって修復することによって回復するので、鍼を受ける人の基本的な健康状態が悪い場合は効いてくるのに時間がかかる傾向があります。

年齢や運動習慣、持病、その他アルコールの摂取量や喫煙の有無などによって効果が現れるまでの期間には個人差がありますので、今回の記事を一つの参考にしていただければと思います。

その他の腰痛に関する内容については、腰痛に対する鍼治療をご参照ください。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

この記事を書いた人