こんにちは、大阪府豊中市ほまれ鍼灸接骨院の富本です。
今回は腰痛の一種であるヘルニアに対する鍼治療について書きたいと思います。
『ヘルニア』という名前はなんとなく聞いたことがあるものの、詳しい症状や治療についてはよくわからないといった人は意外と多いのではないかと思います。
一般的には牽引治療などが有効と考えられておりますが、鍼治療が有効な場合も少なくありません。
この記事では、当院でのヘルニアに対する鍼治療についての説明と、どのタイプのヘルニアに鍼治療は有効なのか?について詳しく解説していきますので是非最後までお読みください。
ヘルニア以外のその他の腰痛に対する鍼治療については腰痛に対する鍼灸治療をご参照下さい。
目次
ヘルニアとは一体何か?
ヘルニアに対する鍼治療について説明する前に、まずはヘルニアとは一体どういう状態なのか?について簡単に理解する必要があります。
というのも、『病院でヘルニアと診断された腰痛持ちの患者さんに鍼治療を行った結果、慢性的に悩まされていた腰痛や足の痺れが軽減した』なんていうことは、鍼灸院においては決して珍しいことでもないのですが、それは実はその患者さんの腰の痛みがヘルニアと診断されたものの、実際はヘルニアによる痛みではなかった場合が少なくないからです。
少し回りくどい言い方になってしまったので、順番に説明していきたいと思います。
まずは『ヘルニアとは一体どういう状態か?』ということについてですが、これは名前の意味を知ると簡単に理解できます。
ヘルニアの正式名称は腰椎椎間板ヘルニアです。
腰の骨と骨の間には椎間板と呼ばれるクッションが存在しています。
(画像赤丸で囲まれている部分が椎間板です。)
椎間板は内側の髄核と外側の繊維輪の2つの組織から構成されています。
この内側に存在している髄核が何らかの原因によって、外側の繊維輪の壁を突き破って後方に飛び出てしまい、腰の神経に圧迫を加えた結果、腰や足に痛み痺れが出現する状態をヘルニアと言います。
ヘルニアはラテン語であり、日本語で飛び出るという意味があります。
おへそのヘルニアなどはとても有名ですね。
アレもまるでおへそが飛び出そうになっているのでヘルニアという名前がついています。
話を戻して腰のヘルニアについてですが、ヘルニアの原因は様々です。
加齢によって起こるものだと考えている人も多いようですが、必ずしもそうではありません。
第一、ヘルニアの好発年齢は20〜40代ですから、これだけ見ても加齢による影響ではないことが簡単に想像できます。
ヘルニアの原因で最も大きいものは、椎間板に対する圧力です。
椎間板のそもそもの役割は、背骨にかかる重力などの負担を軽減する事です。
人の体には重力が上から下に向かってかかりますが、背骨に対する重力による負荷を緩和するために、背骨一つ一つの間に椎間板というクッションが存在しています。
本来であれば、椎間板が負荷を軽減してくれているのですが、姿勢不良などの原因によって、椎間板そのものが負荷に耐えられなくなってしまい結果としてヘルニアを引き起こしてしまいます。
では『どのような姿勢が問題になるのか?』というと、それは圧倒的に座位、つまり座っている姿勢です。
椎間板にかかる圧力は、①寝ている姿勢<②立っている姿勢<③座っている姿勢の順番で高くなりますが、①の寝ている姿勢に比べて、③座っている姿勢は実に3倍以上もの負荷が椎間板にかかっています。
つまり、長時間座り続けているというのは、それだけで腰にかかる負担を大幅に増やすことにつながるということです。
先ほど、ヘルニアの好発年齢は比較的若く、20〜40代と説明しましたが、これはちょうど、社会人で特に仕事が忙しい時期の年齢と一致しています。
私自身の臨床経験的にも、ヘルニアになる人は、高齢者よりも若い青壮年と呼ばれる年代の方が多く、そのほとんどがデスクワークで長時間座りっぱなしだったり、トラックや車の運転で一日中座りっぱなしだったりの職業に従事している人です。
もちろん、前屈みで重たい荷物を持ち上げるような肉体労働に従事している人にも起こりますが、そういった職業の方々は、自らの仕事内容が腰に負担のかかることを知っているからなのか、知らずと腰に負荷がかかりにくいよう気をつけている場合が多く、腰の筋肉を痛めることはあれど、ヘルニアを発症するまで腰を悪くしてしまう人は意外と少ない印象を受けます。
また、座りっぱなしでいると、人の体は硬くなっていきます。
一日中座っている仕事に従事している方は、一日中、背中を丸めて股関節が深く曲がった状態ですから、よっぽど意識的にストレッチや運動を行わない限り、背中や股関節が固まってしまい、いざ動こうと思った際にも思うように動くことができず、結果的に動く際に腰に大きな負担をかけることとなってしまいます。
鍼が効くタイプとそうでないタイプ
椎間板にかかる圧力が増えることによって、椎間板のクッションとしての役割が破綻してしまい、椎間板内部の髄核が後方に飛び出て神経を圧迫することによって痛みが出現するのがヘルニアです。
ヘルニアに鍼をしたところで、ヘルニアが引っ込むわけもなく、、、
ヘルニアによって神経が圧迫されていることによっての痛みは鍼治療で直接治すことはできません。
では、なぜ先ほど『鍼治療がヘルニアに有効だ』と書いたかというと、それはつまり、ヘルニアと診断されたものの、実はその痛みの原因はヘルニアではなかったというパターンが少なくないからです。
ある程度の年齢以上であれば、全く腰に痛みがなくても、レントゲンでヘルニアが見つかったりすることも少なくありません。
つまり、レントゲンなどでヘルニアが写っていたからといって、その痛みが本当にヘルニアが原因で発生しているかどうかは100%断言できるものではなく、実際の痛みは腰の筋肉や関節が原因だったりする場合も少なくないのです。
こういった場合は、腰の筋肉や関節などに鍼治療を行うことで、痛みや痺れの大幅な軽減が見られる場合も少なくありません。
当院でのヘルニアに対する鍼治療
以下は当院で行っている腰痛に対する鍼治療の実際の様子です。
腰の深部に存在する大腰筋を中心に、脊柱起立筋、多裂筋、中臀筋といった筋肉に鍼をしています。
病院でヘルニアと診断され長年脚の痛みと痺れで悩んでいたということですが、検査の結果、ヘルニアそのものが原因となっているのではなく、腰とお尻の筋肉の緊張によって痺れが出ていると判断できたので、緊張している筋肉に鍼治療を行ったところ、数回で痛みと痺れが気にならないくらいになりました。
ヘルニアで症状が出る場所と同じ場所に痛みや痺れが出る別の種類の腰痛は意外と多く、実際に痛みを出している組織がどこなのかを見極めることが治療において最も大切な要素となってきます。
ただし、実際にヘルニアそのものが痛みを引き起こしている場合ももちろんあります。
その場合は、鍼治療でヘルニアそのものを治すことは難しいですが、痛みの感覚を抑える効果のある鍼通電療法などを行い、痛みの程度をコントロールすることが可能です。
あくまでも対処療法ではありますが、どうにもならない激しい痛みなどには有効な方法です。
当院では慢性腰痛や、坐骨神経痛の原因となっていることの多い大腰筋に対して直接鍼治療が行える鍼灸院です。
大腰筋への鍼治療は、どこの鍼灸院でも打てる手法ではなく、専門的な研修や勉強会に参加した鍼灸師のみが行える手法です。
病院でヘルニアと診断されて腰やお尻、脚の痺れ、痛みでお困りの方は是非一度ご相談ください。
ヘルニア以外の腰痛に関しては腰痛に対する鍼灸治療をご参照ください。