こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。
今回は片頭痛に対する鍼治療についてまとめたいと思います。
緊張型頭痛に次いで多いのが片頭痛です。
片頭痛は緊張型頭痛に比べると、日常生活に支障をきたすほど重症の頭痛の場合も少なくありません。
基本的にはトリプタン系の薬を上手に使いながら痛みをコントロールすることが対処法となりますが、鍼治療も数ある対処療法の中で有効な方法の一つです。
この記事では、片頭痛の基本から当院で行なっている片頭痛に対する鍼治療の一部をご紹介したいと思います。
片頭痛の原因
片頭痛の原因は実際のところはよくわかっていないのですが、現在は三叉神経血管説が有力と考えられており、何らかの原因で脳の血管が拡張することによって、血管のすぐそばに存在する脳神経の一つである三叉神経が圧迫されて痛みを感じると言われています。
この何らかの原因というのは人によって様々です。
職場における人間関係のストレスが原因になる方もいれば、天気や気圧の変化が原因になる方もいますし、匂いや音、特定の食べ物が原因になる場合もあります。
根本的な再発を防ぐためには、自分自身で原因となるストレスを把握して、改善することが必要となりますが、多くの場合は改善することが難しいストレスである場合が多く、永遠と対処療法を続けるだけならまだしも、慢性的に薬を飲み続けることによって、薬物依存性の頭痛を発症している場合も少なくありません。
片頭痛の特徴
片頭痛の特徴は以下の通りです。
- 頭の片側が痛い
- ズキズキと脈打つような痛み
- 4〜72時間持続する
- 運動や入浴で悪化する
- 頭痛が出る前に前兆が出ることがある
- 匂いや音、光に敏感になる
上記はこれまでに片頭痛の特徴として考えられていた症状ですが、実は片頭痛であっても、上記の特徴に全く当てはまらないタイプも珍しくありません。
片頭痛という名前が付くくらいですから、頭の片側に痛みが出ることが多いと思われている人がほとんどですが、実は片頭痛患者の半数近くは片側だけでなく両側に痛みが出るという報告があったり、ひどい首肩こりを訴えていたりと、これまでに考えられていた片頭痛の特徴に当てはまらない頭痛も非常に多いです。
片頭痛と緊張型頭痛の特徴を比較してみると、両者には大きな違いがあり、全く別の頭痛のように思えますが、昨今の研究によると片頭痛の多くは緊張型頭痛の特徴を含んでいることがわかってきており、両者を適切に鑑別するのは非常に難しくなってきています。
・片頭痛と緊張型頭痛の特徴
片頭痛 | 緊張型頭痛 | |
頭痛の場所 | 片方の側頭部 | 後頭部 |
痛みの種類 | ズキズキと拍動、脈打つ | 目の奥 |
前兆 | 目の前がチカチカする | 締め付けられるような鈍痛 |
光、音、匂い | 悪化する | 悪化しない |
運動、入浴 | 悪化する | 悪化しない |
東洋医学における鍼治療では『異病同治』(いびょうどうち)という言葉があります。
読んで字の如く、異なる病であっても同じ治療方法で治すことが可能という意味であり、実際に腰痛であれば、筋肉の痛みでも関節の痛みでも同じツボを刺激することで治ることもあるのですが、緊張型頭痛と片頭痛とに同じ治療を行うと、片頭痛が悪化する場合も少なくないので、こと頭痛においては適切に頭痛タイプを見極めることが大切です。
特に片頭痛の場合は、緊張型頭痛と併発していることも少なくなく、片頭痛発作が出る前に前兆として緊張型頭痛の症状が現れる場合も多いことから、片頭痛患者の治療をする場合は両者を別の疾患として捉えるのではなく、延長線上に存在する同じ括りの疾患として捉える考え方も重要です。
片頭痛が雨だとすれば、緊張型頭痛が曇りと考えれば分かりやすくなります。
雨が降る前には必ず雲が現れますが、雲が出ても雨が降らない場合もあります。
雨にも小雨からゲリラ豪雨まで様々なタイプがあり、ちょうど片頭痛の症状が人によって様々であることと一致します。
片頭痛に対する鍼治療
緊張型頭痛であれば、首肩〜頭周囲の緊張している筋肉に直接鍼をして筋肉の緊張を緩和すれば、その瞬間から症状が軽減しますが、片頭痛の場合は、むやみやたらに鍼をして筋緊張を緩和すると逆に頭痛の程度を強めてしまう場合があります。
先述したように、片頭痛は脳の血管が広がることで周囲にある神経が圧迫されて頭痛が出現します。
凝っている筋肉をほぐすことは、その部分の血流を良くすることになり、片頭痛の場合は痛みが強まる可能性があります。
ただし、先述したように片頭痛の場合でも緊張型頭痛を基盤として発症しているパターンもあり、この場合は筋緊張を緩めることによって頭痛の緩和が期待できるので、必要に応じて刺激量や治療方法を調整する必要があります。
当院では、片頭痛に対して鍼治療をする場合は緊張型頭痛の場合に比べて、狙うツボの数を厳選し、かつ置き針の時間を短めに設定して治療します。
肩〜首周りで刺激するツボは10ヶ所程度で置鍼時間は10分ほどですので、緊張型頭痛の治療と比べると、首肩周りの筋肉に対しての刺激量は大幅に減っていますが、その分、手足や頭に存在する頭痛のツボを刺激して、施術後の無駄な不快感(好転反応的な倦怠感)を最小限に留めて、最大限の治療効果が出るようにしています。
使用するツボは、頭痛の程度や個人の状態により様々ですが、頻繁に用いるツボは以下の3つです。
- 頭維(ずい)
- 列欠(れっけつ)
- 太陽(たいよう)
緊張型頭痛のブログで解説した天柱や風池なども使用しますが、片頭痛の場合はそれらに加えて、上記3つのツボもよく使用します。
頭維
おでこの生え際の端っこの少し上側に存在する頭痛のツボです。
『頭を維(つな)ぐ』の字の如く、このツボは手足から頭に到達する複数の経絡の中継地点であり、この部位に異常が生じると、脳に繋がる手足の経絡の流れが滞ってしまい頭痛が発症すると考えられています。
解剖学的にも、このツボが位置する場所はちょうど頭痛治療において非常に重要な側頭筋が存在する場所でもあり、片頭痛だけでなく緊張型頭痛においても非常に重要なツボの一つです。
頭皮に沿うような形で鍼を刺入すると、ズーンと響くような感覚が出現します。
列欠
親指側の手首の少し上側に存在するツボです。
ツボは全身に361ヶ所存在すると考えられており、それぞれのツボが独自の効果効能を持っていますが、数あるツボの中でも特に効果が高い4つのツボを四総穴(しそうけつ)と呼びます。
・四総穴一覧
列欠 | 頭頂は列欠 |
合谷 | 面口は合谷 |
足三里 | 吐腹は足三里 |
委中 | 腰背は委中 |
列欠は四総穴の一つであり、『頭頂は列欠に訪ねる』と古典に記載されていることもあり、頭痛を始めとした頭部に関する症状に対してよく用いられます。
解剖学的に考えると、この部位への刺激が頭痛に有効な理由は正直言って全く検討もつかず、個人的にも当初はこのツボを頭痛の治療に用いることはありませんでしたが(他の四総穴はそれぞれの部位の治療に頻繁に用います)、過去に重度の片頭痛患者さんの治療で難渋している際に半信半疑で使用してみたところ、確かな効果が見られてから使用するようになり、これまで多くの片頭痛患者さんに対して使用しています。
列欠だけでなく、その他のツボも同時に刺激しますが、このツボへの刺激だと、施術後の好転反応が強く出る心配もなく鍼治療が苦手な方や、鍼の後の倦怠感が出やすい人に対しても用いることができるメリットがあります。
太陽
太陽は目尻と眉毛の外側の中間点からやや後ろにずれた位置に存在するツボです。
解剖学的には頭痛と関連が強い側頭筋の上に位置しているツボであり、片頭痛はもちろんのこと、緊張型頭痛や眼精疲労、耳鳴りなど様々な症状において使用する顔面部の代表的なツボです。
ちょうど片頭痛の際に、ズキズキと拍動する痛みが出現する場所に位置しています。
細い鍼で十分な刺激が得られます。
豊中市で片頭痛に対する鍼治療なら
緊張型頭痛であれば、一回〜数回連続して施術することで短期間で大幅に頭痛を改善することも可能ですが、慢性化した片頭痛の場合は薬物依存性頭痛を発症していたり、痛みを感じる脳の機能が問題を起こしている場合もあり、ある程度の期間と治療回数が必要ですが、頭痛の程度をコントロールすることが可能です。
豊中市近辺で頭痛に悩まれており鍼治療を受けてみようか検討されている方は是非、一度当院にご相談ください。
その他の頭痛や、頭痛患者さんの実際の通院例に関しては以下の記事をご参照ください。