緊張型頭痛に対する鍼治療について

2025.01.09

緊張型頭痛に対する鍼治療
目次

院長の富本 翔太です

こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院です。

今回のブログはタイトルにもあるように緊張型頭痛に関する内容です。

頭痛に詳しい方であっても意外と緊張型頭痛に関して勘違いしている部分も多かったりするので、そもそも緊張型頭痛とは一体何か?という根本的な疑問も解消できればと思います。

緊張型頭痛は当院の患者さんの来院理由の中で最も多い症状です。

その分、知見も溜まっており最も改善率が良い症状の一つです。

緊張型頭痛に対して鍼治療は非常に有効で、有名な頭痛外来や脳神経外科、ペインクリニックに通院しても治らなかった頭痛であっても、鍼をすれば数回で大幅に痛みが軽減することも珍しくありません。

急性の場合は1回〜3回程度の治療で良くなります。

慢性であっても数回治療を続けることで、大幅に頭痛が軽減しQOLを向上させることも可能です。

鍼で頭痛が良くなるの?

鍼なんかで本当に頭痛が良くなるの?

鍼に対してあまり良いイメージを持っていない人も少なくないかと思いますが、頭痛でお悩みの方は是非最後までお読みください。

緊張型頭痛の患者さんに対する実際の治療例については緊張型頭痛に対する鍼治療実際例『30代男性会社員』をご参考下さい。

緊張型頭痛とは

まず、緊張型頭痛とはそもそも何か?について正しく理解しておく必要があります。

頭痛は大きく一次性頭痛二次性頭痛とに分類されます。

一次性頭痛は頭痛そのものが病気となっているタイプであり、二次性頭痛は脳や脳神経などに異常があり、その症状の一つとして頭痛が出ているタイプです。

一次性頭痛二次性頭痛
原因がない頭痛脳などに器質的な異常がある
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛脳卒中、クモ膜下出血、外傷性など

一次性頭痛は主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3種類に分類されます。

中でも緊張型頭痛は日本における全頭痛患者の中でも20%以上を占めており、人口にして実に2200万人以上が悩まされている代表的な頭痛です。

緊張型頭痛は『筋収縮性頭痛』の別名がついているように、主に首や肩の筋肉が緊張することによって発症する頭痛です。

この頭痛を訴える方のほとんどが、頭痛発生以前から首や肩の筋肉の凝りを抱えており、これらの筋肉が過度に緊張することによって、首の後方や後頭部〜側頭部に頭痛が発生します。

緊張型頭痛の特徴は以下の通りです。

緊張型頭痛の特徴

  • 被帽感(頭に何か被っているような感覚)
  • 後頭部を締め付けられるような感覚
  • 目の奥が痛い
  • デスクワークやストレスのかかる作業の前後で発症する頭痛

患者の訴えが上記のリスト項目に当てはまる場合は緊張型頭痛の可能性が非常に高いですが、慢性的に頭痛を抱えている患者は緊張型頭痛と同時に片頭痛を抱えている場合も多いので、同時に片頭痛の特徴に当てはまる項目がないかも確認しておく必要があります。

片頭痛の特徴一覧

  • 拍動性の痛み(ズキズキ)
  • 片方の側頭部が痛い
  • 前兆(閃輝暗点)がある
  • 光や音、匂いで悪化する
  • 運動や入浴によって悪化する
  • ワインやチョコレートなどの刺激物で悪化する
  • トリプタンが良く効く

片頭痛の特徴についての詳細は別項、片頭痛に対する鍼治療をご参照下さい。

↓比較してみると、特徴には大きな違いがあります。

緊張型頭痛と片頭痛の鑑別緊張型頭痛片頭痛
頭痛の場所後頭部、目の奥片方の側頭部
痛みの種類締め付けられるような鈍痛ズキズキと拍動、脈打つ
前兆なし目の前がチカチカする
光や音、匂い悪化しない悪化する
運動、入浴悪化しない悪化する

院長の富本 翔太です

片頭痛と緊張型頭痛は、全く逆の機序で発生するので、片頭痛患者に緊張型頭痛患者に行う鍼治療を行うと、逆に頭痛が悪化する可能性があります。

特徴を比較すると、鑑別は簡単そうに思えますが、片頭痛でも後頭部や首が痛かったり、緊張型頭痛であっても側頭部がズキズキと痛む場合もあるので、誤診されることも少なくありません。

しかし、緊張型頭痛であれば、運動や入浴によって悪化する場合はなく、ワインやチョコレートなどで頭痛が生じることもほとんどないので、これらの特徴があるのかどうか確認しておくことが非常に重要です。

緊張型頭痛に対する鍼治療の実際

以下の写真は緊張型頭痛に対して、当院で行っている実際の鍼治療の一例です。

首肩こりと頭痛に対する鍼治療

当院では緊張型頭痛に対しては、以下の3つのポイントに対する鍼治療を行なっており、総じて非常に良好な治療成績が得られています。

  • ①後頭下筋群への深鍼
  • ②首肩こり筋全体への響く鍼
  • ③頭皮鍼(側頭筋への深鍼)

①後頭下筋群への刺激

後頭下筋群は緊張型頭痛において、最も重要な治療ポイントです。

小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つの筋肉をまとめて後頭下筋群と言いますが、中でも天柱(てんちゅう)が存在する部分が非常に重要です。

後頭下筋

天柱は2番目の首の骨の高さに存在する僧帽筋の外側に存在するツボ(治療点)であり、ちょうど大後頭神経が皮下に出てくる場所でもあり、頭痛治療において非常に重要なポイントです。

天柱と風池

院長の富本 翔太です

天柱の横の風池(ふうち)も頭痛治療において非常に重要なポイントで、緊張型頭痛の患者さんのほとんが非常に響きやすいツボです。

当院ではこのポイントに対して響く鍼を行うと同時に、北京堂鍼灸院創始者の淺野式の手法で、通常の天柱の位置よりもやや上方から長い鍼を用いて、後頭骨を擦るように後頭下筋を刺激する方法も行います。

これらの部位に適切に鍼を行うと、普段の頭痛が再現される感覚(響き)が出現し、高い治療効果が期待できます。

鍼をした際に響きがあるかどうかが非常に重要で、同じ場所に鍼をしても、響きが無ければ効果がありませんので使用する鍼や鍼を刺す方向などが非常に重要です。

②首肩こりの筋肉に対する響く鍼

緊張型頭痛を引き起こす可能性のある頚部〜肩〜肩甲骨周囲の筋肉で硬さが目立つ部位を徹底的に狙います。

中でも、僧帽筋、頭半棘筋、板状筋、胸鎖乳突筋といった後頭部〜側頭部の骨に付着する筋肉は、緊張型頭痛患者において緊張している場合がほとんどですので、必ず狙う治療ポイントです。

特に、板状筋は下を向くことによって負担が溜まりやすい筋肉であり、デスクワークに従事する現代人において緊張していない人はいないと言っても過言ではない筋肉です。

板状筋
院長の富本 翔太です

僧帽筋や頭半棘筋、後頭下筋は重なりあって存在している筋肉ですので、天柱というツボはある意味一石三鳥となる超重要治療ポイントです。

鍼治療が最も効果的ではありますが、どうしても辛い場合はセルフケアの一環として、天柱をセルフマッサージするのもおすすめです。

③頭皮鍼

単純な緊張型頭痛であれば、①と②の手法で後頭下筋群と頚部〜肩の緊張している筋肉に鍼をすることで効果が見られますが、同時に側頭筋を中心とした頭部に存在する筋肉やツボを加えることでより高い効果が期待できます。

側頭筋には長い鍼を使用して骨を擦るようにして鍼を行います。

以下の写真も頭痛患者に対する鍼治療の様子です。

側頭筋に対する鍼治療

少し見にくいですが、側頭部に鍼が3本刺さっています。

この患者さんの場合は、側頭筋への鍼をした際に普段の頭痛や頭重感、目の奥の辛さなどが再現されるような感覚がありました。

また、側頭部だけでなく、頭頂部に存在する百会や四神総なども頭痛に対する効果が期待できるツボですので、同時に鍼をすることが多いポイントです。

緊張型頭痛患者が行うべきセルフケア

これまで繰り返し訴えてきたように、緊張型頭痛の改善に鍼治療は非常に有効です。

上記の3つの治療点に適切に鍼を打つことで、締め付けられるような頭痛や頭重感は即座に消失する場合がほとんどです。

しかし、鍼治療だけで頭痛が完全に消失するかと言うと、正直難しいのが現実です。

というのも、緊張型頭痛は多くの場合、デスクワークで長時間パソコン作業を行なったり、長時間下を向く作業や、ストレスフルな仕事などが原因となり、首や肩の筋肉の緊張が強くなった結果として発症する、いわば生活習慣病だからです。

生活習慣病は、薬などで一時的に症状をコントロールすることは可能であっても、根本的には原因となっている習慣を改善しなければ、本当の意味で完全に治ることはありません。

メタボなどの生活習慣病であれば、食事制限や運動などによって、改善することが可能ですが、先述した緊張型頭痛を引き起こす生活習慣は、どれも患者にとって生きる為(生活費を稼ぐ)に必要不可欠な作業であり、削ることができません。

ですので、治療と同時に非常に重要になってくるのがセルフケアです。

昔は頭痛の民間療法として梅干し額療法が主流だったようです。

梅干し額療法

その名の通り、梅干をこめかみ付近に乗せることで頭痛が軽減されると信じられていたようですが、現代人であれば、この方法が少なくとも怪しい方法であることは説明不要でしょう。

昔の人は慣習として、様々な民間療法を用いて病気と戦ってきたわけですが、正しい方法もあれば今となってはよくわからないオカルトチックな慣習もありました。

頭痛に関する様々な研究が進んできた現在においては、化学的に正しいと考えられているセルフケアが沢山あります。

緊張型頭痛においては、首や肩の筋肉のコリをほぐすことが、間接的に頭痛に対するセルフケアに繋がります。

緊張型頭痛患者におすすめのセルフケア方法は以下の3つです。

緊張型頭痛セルフケア

  • 頭痛体操
  • 首を鍛える
  • 入浴の習慣

頭痛体操

緊張型頭痛の場合は、首肩の筋肉を緩めることによって、頭痛の頻度や程度の軽減が期待できますので、首や肩の筋肉をほぐす適度な運動が欠かせません。

特に、デスクワークで座りっぱなしの仕事をしている人は往々にして運動不足の生活に陥っていることが多く、こういった方の場合は、週に数回の有酸素運動を行うようにするだけでも頭痛は軽減します。

ウォーキングやランニングでも問題ありませんが、どうしても運動が苦手という方には頭痛体操がオススメです。

頭痛体操リンク

首を鍛える

姿勢不良などによって頭部が前方に偏移してしまうと、後頚部や背部の筋肉には過剰な負担がかかります。

ストレートネックなどが代表的な例でしょうか。

体型にもよりますが、普通体型の方であれば、頭はボウリングの球と同じくらいの重さがあるので、頭部が前方に偏移するストレートネックの姿勢では、通常の姿勢に比べて非常に大きな負荷が首肩の筋肉にのしかかることになります。

これは、我々が想像する以上に大きな負荷であり、毎日繰り返し負荷がかかることで、筋肉の疲労が蓄積し、緊張型頭痛の原因となる首肩の筋肉の慢性的なコリが形成されてしまいます。

緊張型頭痛は肩こりが大きな原因となる

頭の重さ自体はどれだけ頑張っても変えられませんが、頭を支える側の筋肉はトレーニングを行うことによって強くすることが可能です。

首の筋肉は背中や肩甲骨に付着している筋肉も沢山あるので、ジムに通われている方はラットプルダウンやシーテッドローイング、ダンベルやバーベルを使用するシュラッグなどの種目がオススメです。

オススメはダンベルを使用したシュラッグです。

ダンベルシュラッグ一例

ダンベルがなければ水入りのペットボトルで代用可能ですので、いつでもどこでも行えます。

2〜3ヶ月程度継続することによって効果が期待できます。

首が太くなるのが不安

プロレスラーでもないのに、そんなに激しく筋トレをするなんて、、、

首が太くなったらどうしよう。。

院長の富本 翔太です

↑このように思われる人もいるかもしれませんが安心してください。

トレーニングのプロであるボディビルダーが厳密な栄養管理の下でトレーニングを行ったとしても1年間で発達する筋肉はせいぜい1キロ程度です。

首肩こりの改善目的で数ヶ月間のトレーニングを行う程度では心配するほど首が太くなるようなことはありません。

入浴習慣

毎日湯船に浸かる習慣をつけることも大切です。

風呂

元々、若い人を中心に湯船に入らずに風呂はシャワーだけで済ます人が増えてきていますが、最近では『風呂キャンセル界隈』なんて言葉が出てきているくらい、風呂(湯船)に入らない人が増えているようです。

風呂キャンセル界隈、通称、風呂キャン民のほとんどが若い女性だそうです。

風呂キャンセル界隈

風呂キャン民は、湯船に入らないだけでなく、そもそも風呂に入らないようなので論外なのですが、若い人を中心に『風呂=面倒臭いもの』としたイメージを持っている人が多くなっているようです。

特に女性の場合はメイクを落としたり、髪の毛を乾かすのに時間がかかって大変みたいですね。

しかし平安時代は5日に1回くらいの入浴が普通だったようですが、世の中はすでに令和も7年目です。

湯船に浸かって体温を上げることは、その日の筋肉の疲労を緩め、良質な睡眠を取るために非常に重要な行為です。

特に冬の寒い時期は、一日中寒さに曝されて筋肉が常に緊張している場合も多く、湯船に浸かる時間は、凝り固まった筋肉の緊張を緩めるために非常に重要な時間です。

ちなみに少し興味があったので、湯船に浸からない理由をネットで調べてみましたが、『時間がない、水道代やガス代が勿体無い、風呂掃除が面倒臭い』などが主な理由だそうです。

確かに風呂掃除は面倒臭いです。間違いありません。

私も自宅では風呂掃除を担当していますが、掃除する前は腰が重いです。

風呂を沸かすのに必要な料金はガス代と水道代を合わせると、一回約100円だそうです。

毎日風呂に入ると月に3000円ですから、確かにそもそも風呂が好きでない人からすると節約したいと思っても仕方ないかもしれませんが、せめて冬場だけでも湯船に浸かるようにすると、慢性的な首肩こりも緩み、緊張型頭痛であれば症状の軽減や予防が期待できます。

一回、鍼灸院に行くよりもはるかに安い金額で予防ができると考えれば、決して高いコストではないでしょう。

豊中市で緊張型頭痛に対する鍼治療なら

以上が緊張型頭痛に対する治療法やセルフケア方法になります。

記事が長くなりすぎないように、だいぶ端折ったつもりですが、それでも結構な長さになってしまいました。

ここまで読まれた人は多くないかもしれませんが、逆にここまで読まれた人は相当頭痛に悩まされていることに違いないでしょう。

緊張型頭痛に対して鍼治療は非常に有効です。

しかし、どのような方法であっても効くという訳ではありません。

鍼灸治療には様々な流派があり、それぞれで治療の方法や方針が全くと言っていいほど違う場合も少なくありません。

また、すでに頭痛外来などを受診されている方はご存知でしょうが、頭痛薬を飲み続けることによって発症する薬物乱用性頭痛などもあります。

痛みは慢性化すればするほど治りにくくなります。

豊中市や豊中市周囲で頭痛にお悩みの方は是非当院にご相談ください。

ほまれ鍼灸院

ほまれ鍼灸院は阪急豊中駅から徒歩3分の位置であり、箕面や吹田、池田といった近隣の地域からの患者さんも多くいらしています。

頭痛に悩む多くの人が鍼灸という治療手段を知っていただければ幸いです。

緊張型頭痛に対する鍼治療実際例『30代男性会社員』

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

この記事を書いた人