橈骨神経麻痺に対する鍼治療

2024.05.19

橈骨神経麻痺に対する鍼治療
目次

こんにちは、大阪府豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。

今回は橈骨神経麻痺についてです。

ハネムーン症候群という変わった別名が付けられている橈骨神経麻痺ですが、発症の原因は多岐にわたります。

鍼治療はその全ての原因に対して有効というわけではありませんが、筋肉の過度な緊張などによって発症するタイプであれば非常に有効です。

橈骨神経麻痺で悩まれており鍼治療を検討している方は是非お読みください。

橈骨神経麻痺の原因について

基本的に、どの部位であっても神経麻痺という状態は何らかの原因によって神経が長時間の圧迫を受けることによって発症します。

主な原因は以下の三つです。

神経麻痺の原因

  • 神経の走行途中に過剰な骨などが形成されている。
  • 姿勢不良などによって骨や筋肉の間の通り道が狭くなっている。
  • 筋肉の過度な緊張によって神経が圧迫されている。

これら以外でも糖尿病が原因のものであったりと様々な神経麻痺がありますが、主な原因は上記の3つです。

橈骨神経麻痺の場合について詳しく見ていきましょう。

①神経の通り道が何らかによって狭くなっている

神経は背骨から出て身体の末端に向かう途中でいくつものトンネルを通りますが、何らかの原因によって、この通り道が狭くなっていることによって神経が圧迫を受けてしまい痛みや痺れが発生します。

過剰な骨やガングリオンなどが代表的な例として挙げられます。

ガングリオンとは簡単にいうとデキモノのことで、何らかのきっかけでガングリオンが神経の側にできてしまうと、ただでさえ狭い神経の通り道がさらに狭くなってしまい神経の絞扼や圧迫が起こります。

②姿勢不良や使い過ぎによる原因

橈骨神経麻痺の場合は、前腕の筋肉を過剰に使用することが原因で痛みが発症する場合が多いです。

橈骨神経

橈骨神経のすぐそばを走る長橈側手根伸筋や短橈側手根伸筋、腕橈骨筋や回外筋などの筋肉が大工作業などでの使い過ぎによって長時間緊張を強いられることで発症します。

③外部からの圧迫による原因

橈骨神経麻痺の原因としてよく知られているハネムーン症候群は典型的な筋肉による神経の圧迫です。

ハネムーン症候群

ハネムーン症候群は橈骨神経麻痺の別名で、新婚夫婦がベッドで寝る際に長時間腕枕を続けることによって発症する腕から指先にかけての痺れのことを指しますが、これは腕枕をする男性の腕の上に女性の頭が乗り、その重さによって上腕三頭筋から橈骨神経までが長時間圧迫されることによって神経麻痺が発症することを言います。

この場合は上腕三頭筋を圧迫から解放することによって症状が軽減しますが、中には腕枕をやめて時間が経過しても痺れが治らない場合もありますので、そういった場合は橈骨神経を圧迫している上腕三頭筋の緊張をストレッチやマッサージ、鍼治療などで緩めてあげることで多くの場合改善が見られます。

鍼治療が有効な橈骨神経麻痺は、このような筋肉の緊張などによって神経が圧迫される場合です。

逆に、過剰な骨が形成されることによって神経が圧迫を受けている場合は、いくら筋肉をほぐしても過剰な骨を除かない限りは神経が圧迫や絞扼から解放されることはなく症状の改善は期待できません。

橈骨神経麻痺の特徴と症状

橈骨神経麻痺は、橈骨神経が絞扼される場所によって、橈骨神経麻痺後骨間神経麻痺の2種類に分別されます。

下の画像にて赤い丸で囲まれている高さで橈骨神経が浅枝と深枝に分岐します。

橈骨神経の分枝

この赤丸よりも上の部分で神経が障害を受けた場合は橈骨神経麻痺。

赤丸よりも下の部分かつ深枝の部分で障害を受けた場合を後骨間神経麻痺と分類します。

橈骨神経麻痺

橈骨神経が肘の高さで浅枝と深枝に分岐する前の部分で絞扼される症状を橈骨神経麻痺と言います。

浅枝は主に知覚に関する神経で、深枝は運動に関する神経です。

橈骨神経は手首を返す役割のある前腕の伸筋群を支配しているので、この神経が障害を受けた場合は手関節や指を伸展させることができず、下垂手と呼ばれる典型的な状態になります。

下垂手

症状としては、橈骨神経の枝が支配している上腕や前腕の後面の部分に鈍痛などの知覚障害が現れるのに加えて、下垂手を始めとした運動麻痺も見られます。

後骨間神経麻痺

後骨間神経は橈骨神経が腕から指先へ向かう途中に枝分かれする神経の一つです。

後骨間神経

橈骨神経が肘の高さで浅枝と深枝に分岐しますが、後骨間神経はすぐそばにある回外筋によって圧迫を受けることによって発症します。

後骨間神経は主に運動を司る神経で、手首や手の指を反らす際などに働いています。

手首を反らす長橈側手根伸筋は後骨間神経ではなく橈骨神経に直接支配されているので、後骨間神経のみに問題がある場合は手首を反らすことは可能で、指を反らすことができない下垂指の状態となります。

下垂指

後骨間神経は、その走行の途中で回外筋を貫いていますが、前腕を酷使する作業などによってこの部分で回外筋が強い緊張を強いられることによって圧迫を受けて発症します。

橈骨神経麻痺に対する鍼治療

橈骨神経麻痺に対する治療は基本的には安静のみとなります。

多くの場合、橈骨神経麻痺は前腕を酷使する仕事に従事している人に発生しやすい(電動ドリルを長時間使用する大工など)ので、原因となる動作を控えて、腕をなるべく使用しないようにします。

過剰な骨やガングリオンが形成されている場合を除くと、多くの場合は安静で症状が軽減すると考えられているので病院を受診した場合などは数ヶ月間は安静を指示される場合がほとんどです。

ガングリオンなどのデキモノが形成されている場合は手術を行ってデキモノを取り除きます。

基本的にはこれら二つの方法で鈍痛や痺れといった症状が軽減する場合が多いようですが、中には安静にしていても症状の程度が変わらなかったり、仕事などの事情でどうしても安静にすることができない人もいます。

このような場合においては、鍼治療は有効な選択肢の一つです。

実際当院に来院された橈骨神経麻痺の症状の方は、ほぼ全員が安静にしたいものの、なかなか仕事を休むことができず、痛みや痺れを我慢しながら働いている方々です。

前腕の筋肉の使い過ぎによって痛みが発生しているので、酷使している限りは完全に治りきることは難しいですが、それでも鍼や鍼通電によって緊張している筋肉を緩めることによって、痛みや痺れを大幅に軽減させることは十分可能です。

橈骨神経麻痺に対する鍼治療では、症状のある部位のみでなく、背中から腕全体にかけて鍼治療を行います。

首や背中の筋肉は上腕や前腕の筋肉の緊張と密接に繋がりがあるので、鍼治療を行う場合も、痛みが出ている部分だけでなく背中から腕全体にかけて鍼を行います。

橈骨神経麻痺に対する鍼治療の一例

また鍼治療に加えて損傷している組織に微弱電流を流すことによって、患部の損傷の早期の回復を促すことが可能です。

まとめ

今回は橈骨神経麻痺に対する鍼治療についてまとめました。

鍼治療はガングリオンなどの圧迫が原因となっている橈骨神経麻痺に対しては効果が見込めませんが、それ以外の原因によるタイプであれば効果が期待できる治療です。

病院を受診した結果、レントゲンなどの画像検査に問題がなく、しばらく安静にしているものの症状に変化がない場合は是非鍼治療を試してみてください。

当院の場合は、多くの例で3〜5回ほどで変化が見られます。

大阪府周辺で橈骨神経麻痺に対しての鍼治療をご検討されている方は是非当院にご連絡下さい。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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