こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。
腰の筋肉の過度の緊張が原因となって発症するお腹〜骨盤〜お尻の外側までの痛み痺れの原因の一つに、腸骨下腹(ちょうこつかふく)神経の絞扼性神経障害があります。
腰の深部には大腰筋や腰方形筋が存在しますが、腸骨下腹神経は腰神経叢から枝分かれして抹消へ向かう際に、これらの筋肉によって圧迫や絞扼を受けて痛み痺れが発生する恐れがあります。
腰痛と同時にお腹〜臀部〜大腿外側などに痛みを感じる方の中で、以下の特徴に当てはまる方は腸骨下腹神経に問題が生じている可能性があります。
腸骨鼠蹊神経障害の特徴
- 慢性的な腰痛がある
- ぎっくり腰を何度も繰り返している
- 長時間座位で過ごしている
- 座り姿勢から立ち上がる際に腰が伸びない
- 腰だけでなく、お尻や鼠蹊部〜お腹あたりまで痛みがある
コロナ禍以降、在宅ワークで仕事する人が増えて以降、かなり多くなっている印象があります。
会社でデスクワークをするのと自宅とデスクワークをするのとでは、座っている時間に変わりはないと思われるかもしれませんが、在宅ワークの方は通勤する必要がなくなっているので、歩く機会さえも激減してしまい、本当に一日中座っている時間が長くなることによって発症していることが予想できます。
腸骨下腹神経が大腰筋レベルで絞扼を受けている場合は、腰をマッサージしたりしても解消しないので、長い鍼を用いて、大腰筋や腰方形筋、場合によっては腸骨筋に直接鍼をすることで症状の改善が見込めます。
腸骨下腹神経とは?
腸骨下腹神経は腰神経叢から分岐する骨盤周囲の感覚を支配する神経です。
腰神経叢は脚に向かう神経の配電盤のような場所であり、腰の背骨から出た神経が一度束になって集まってから、それぞれの配置先へと向かうような構造となっています。
腸骨下腹神経は、背中と腰の境目となる高さの背骨から出る神経です。
腸骨下腹神経は、お尻の外側や鼠蹊部〜お腹のあたりまでのエリアを支配しているため、大腰筋の上部や腰方形筋の肋骨付着部あたりに筋肉の緊張が強く見られる場合、このあたりに痛みや違和感が出現します。
腸骨下腹神経痛に対する治療
先述したように腸骨下腹神経は腰の深部の筋肉である大腰筋や腰方形筋の間を走行します。
慢性腰痛やぎっくり腰を繰り返しているような方は、大腰筋が異常に緊張してしまっている場合が多く、これら大腰筋をはじめとする腰部の深層の筋肉の緊張によって、腸骨下腹神経に圧迫力が加わり、お腹や鼠蹊部の辺りにまで痛みが出ている場合がほとんどです。
大腰筋は腰部の皮膚表面から7センチ程度の位置に存在している深層筋なので、ストレッチやマッサージでは直接刺激を加えるのが難しい部分であり、鍼治療で刺激を加えるのが非常に効率的な治療法の一つです。
腸骨鼠蹊神経は胸椎と腰椎の移行部あたりから出ている神経ですので、やや上方に位置する大腰筋や腰方形筋に7〜9センチ程度の針を使用して刺激を加えることで、鼠蹊部や骨盤周囲に普段の痛みや違和感を響きとして再現することが可能となります。
鍼をした際に響きの感覚が出るかどうかは非常に重要なポイントであり、今回の場合で言うと、大腰筋や腰方形筋に鍼をした際に普段痛みを感じている部位(お腹や骨盤付近)に普段の痛みと似た感覚が出現したのであれば、治療効果が期待できます。
初回から響きが出る場合は筋緊張の程度がそれほど強くないことが予想できますので、5回程度繰り返し鍼をすれば改善可能ですが、あまりにも筋緊張が強い場合は、最初何回かの治療のうちは、鍼の響きも感じないこともあり、このような筋緊張の程度が強い重症の場合は10回程度繰り返し治療する必要があります。
治癒までにはある程度の期間がかかる可能性のある腰痛の一つですが、骨や軟骨の変形などが原因となって発症する腰椎神経根症や坐骨神経痛とは異なり、単純な筋肉の緊張が原因となって引き起こされている症状であれば、時間はかかれど治る症状ではあります。
しかし、鍼をすれば改善する症状ではあるものの、原因(環境)を変えない限りはイタチの追いかけっこと同じで時間が経てば再発します。
症状の根本的な解決のためには、デスクワークの環境を整えて、長時間座らないようにする、長時間座る場合はこまめに股関節のストレッチを実施するなど工夫が必要です。
諸外国においては、デスクワークによる長時間の座位姿勢は健康に悪いことが常識となっており、スタンディングデスクを導入したりしている企業も少なくないようです。
日本でスタンディングデスクを導入している企業はそれほど多くないでしょうが、在宅勤務の方であれば環境を整えることは可能ではないでしょうか?
決して安い買い物ではなく、ある程度の投資が必要となりますが、長期的な目線で腰の健康を考えるのであれば結果として安い買い物になるかと思われます。
類似疾患
近い場所に痛みが出る疾患に外側太腿皮神経炎や上殿皮神経障害などがあります。
外側大腿皮神経炎
外側大腿皮神経炎は腸骨下腹神経と同じく腰神経叢の枝の一つである外側大腿皮神経が何らかの原因によって絞扼を受けて発症する症状であり、腸骨下腹神経炎で痛みを感じる場所が非常に似通っていることもあり、注意して観察する必要がある症状の一つです。
上殿皮神経障害
腸骨下腹神経炎では臀部の外側あたりにまで痛みが出る可能性がありますが、臀部の後方あたりでは上殿皮神経が絞扼されることによって発症する上殿皮神経障害の可能性もありますので、いずれにせよ腰〜お腹〜下肢に痛みや痺れを訴える場合は、痛みが出ている部位を注意深く細かく観察することが重要となります。
豊中市で腸骨下腹神経に対する鍼治療ならほまれ鍼灸院へ
豊中市近辺で腰痛や鼠蹊部〜お腹周辺の痛みでお困りの方は是非一度当院にご相談ください。
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