腰方形筋のぎっくり腰に対する鍼治療

腰方形筋が原因の鍼治療に対する実際の治療
目次

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。

ぎっくり腰の原因の一つに筋・筋膜性腰痛があります。

痛める筋肉で最も多いのは脊柱起立筋ですが、次点で多いものに腰方形筋による痛みがあります。

腰方形筋

腰方形筋は肋骨と骨盤を繋ぐ腰の深部に存在する筋肉です。

体幹を側屈したり、伸展したりする動作を行うだけでなく、腰椎を安定させる役割を担っています。

腰方形筋が原因の腰痛の特徴は以下の通りです。

腰方形筋性の腰痛の特徴

  • 腰の片側だけ痛い
  • 体をひねる動作で痛い
  • 痛い側に体を傾けると痛みが強まる
  • お尻や足の付け根あたりまで痛い
  • くしゃみをすると痛い
  • 表面ではなく腰の奥の方が痛い
  • 腰の奥の方にシコリのような硬さを感じる
  • 精神的ストレスを抱えている

腰痛持ちの方で当てはまる人は多いのではないでしょうか?

腰方形筋は腰の深部に存在している大腰筋と隣り合わせに存在しているので、いくつか同じ特徴を持ちますが、特に『腰の片方だけが痛くて、腰の奥の方でシコリのような違和感を感じる』場合は腰方形筋を痛めている可能性が非常に高いです。

今回のブログ記事では、そういった訴えで来院した、ぎっくり腰患者さんに対する実際の鍼治療の様子についてをまとめていますので、同じような腰痛でお困りの方は是非、参考にしてみてください。

*この記事は症例報告ですので、ぎっくり腰に対する鍼治療の基本的な内容について知りたい方は、ぎっくり腰に対する鍼治療をご参照ください。

患者情報

  • 20代男性
  • 立ち仕事(一日8時間近く立ちっぱなし)
  • 運動習慣なし
  • スポーツ歴…剣道
  • 既往歴なし

1週間前にぎっくり腰を発症した患者さんが来院されました。

負傷理由は特になし。

重いものを持ったりしたわけではないが、発症前から違和感が出現し、じわじわと痛くなってきたようです。

ぎっくり腰といえば、『重たい物を持ち上げた際にバキッ!』といったイメージを抱いている人が多いでしょうが、決してそうではなく、今回のように特に何もしていないのに徐々に徐々に痛みが強まり発症するパターンも少なくありません。

加えて、ぎっくり腰は座りっぱなしの人がなりやすいと考えられていますが、立ちっぱなしでも発症します。

座りっぱなしであれば、腰椎の椎間板ヘルニアや大腰筋の緊張による痛みが多く、立ちっぱなしであれば、腰椎の椎間関節症などが発症しやすくなります。

問診と検査を行ったところ以下の所見が得られたことから、右側の筋筋膜性腰痛で間違いなさそうです。

・初回来院時の腰痛の状態

  • 片側性の痛み(右側)
  • 安静時痛なし
  • 前屈、後屈、右左の側屈で疼痛増大
  • 下肢の痺れ、放散痛なし
  • 棘突起や椎間関節の圧痛なし

筋肉や関節の痛みの場合は、基本的には圧痛と言って、痛んでいる部位を直接押さえると痛みが再現されます。

今回の場合も圧痛を確認してみると、右側の脊柱起立筋と腰方形筋は軽く押さえただけでも鈍痛を感じているので、腰方形筋だけでなく、隣に存在している脊柱起立筋の一種である腰腸肋筋も痛めているようです。

腰方形筋や大腰筋、腰腸肋筋などはそれぞれ胸腰筋膜を介して連動しており、起始停止部分も共有している場合も多いので、実際の臨床においては両者を同時に治療することも少なくありません。

本来であれば、股関節周囲筋の硬さの確認などを実施して、どこに原因があるのかを確認してから治療を行いますが、今回は安静時痛こそないものの、少しでも腰や股関節を動かすと腰に響くとのことで、股関節周囲筋の確認は実施せず、腰からお尻の筋肉に対して早速ですが鍼を実施しました。

初回

以下の写真は、実際の初回の治療の際の様子です。

右側の脊柱起立筋、両方の多裂筋、中臀筋に鍼をしています。

脊柱起立筋、多裂筋、中臀筋に対する鍼治療の様子

腰方形筋に対しても鍼を行う予定でしたが、鍼の響きが少し応えたとのことで、初回は腰方形筋には刺激を入れず上記の筋肉のみの治療となりました。

15分弱置き針を行なっています。

置き針の効果や目的については以下の記事をご参照ください。

鍼治療における最適な置鍼時間とは?

鍼を抜いた後の直後効果としては以下の通りです。

  • 前屈(前屈みの痛み)   10→3
  • 後屈(身体を反らす痛み) 10→3
  • 側屈(腰を横に倒す動き) 10→3

鍼をする前と比べて、体幹を前後屈させる際の痛みが大幅に減少しています。

ただし、前後屈時の痛みこそ楽になっているものの、左に身体を倒した際の痛みはやや残存しているようです。

こちらはおそらく腰方形筋から出ている痛みなのでしょう。

今回は腰方形筋に対して鍼を刺していないので残存していて当然です。

もう少しやればさらに良くなるであろうことは想像できましたが、患者が20代で若いのと、側屈時痛以外は今回の鍼で十分効いていること、また、それに加えて患者がそもそも鍼が苦手であることなどを踏まえて1度目の治療はこれで終了とすることに。

2〜3日後に効いてきて今よりも良くなってくると思いますと伝え、3日後に予約をとってもらい終了しました。

2回目

3日後に来院されました。

『その後どうですか?』とざっくばらんに聞いてみると、『お陰様で順調に痛みの程度が下がり、ほとんど気にならなくなっている』とコメントされました。

腰の痛みを庇いながら日常生活を送っていたのが随分楽になったようで、痛みの程度も10から3に下がった状態でキープできているみたいです。

しかし痛みの程度は下がっているものの、0になっているかと言うと決してそうではなく、前回に引き続き、体幹の前屈、後屈、側屈の際に右腰に痛みが出現し

残っている痛みはおそらく前回鍼を打っていない腰方形筋が原因だと判断して、前回の施術部位に加えて右の腰方形筋に対して鍼を実施しました。

初回の治療で、痛みの程度や可動域の制限が大幅に解消されている場合、基本的には2回目も同じ治療を行いますが、今回の場合は、初回の際に腰方形筋に鍼をしていなかったので、今回は残っているあと少しの痛みを消失させるために前回の施術部位に加えて腰方形筋に鍼を実施しました。

以下は2回目の施術の際の記録です。

腰方形筋に対する鍼治療

腰方形筋に鍼をした際は、ズシンと響くような感覚が見られて、普段感じている痛みが再現されます。

前回と同じく15分間弱置鍼して終了。

直後効果の確認として、左側に体幹を倒した際の痛みの程度を聞いたところ、痛みは0とのこと。

明日くらいにはもっと状態が良くなってくると思いますと伝えて、また痛くなるようなことがあれば来てくださいと伝えて一旦治療終了となりました。

その後は来院されていません。

ぎっくり腰は早期に治療をするのが大切

今回は患者さんの年齢が若く、初めてのぎっくり腰だったので、引きずることなく早期の改善が可能でした。

ぎっくり腰も繰り返しているうちに、深部の筋肉に緊張が及ぶ場合があり、そのような場合は治療回数が増える傾向にあるので、グキッと腰を捻ってしまったり痛みや違和感がある場合は可能な限り早期に治療を開始することが大切です。

特に40〜50代で発症するぎっくり腰は腰椎の変形を基盤として発症している場合が多く、早期に治療を開始しないと慢性化する場合も少なくありません。

初めてのぎっくり腰の場合、当院での通院回数の目安は3〜5回程度です。

何度も何度も繰り返しているぎっくり腰の場合は5〜10回程度の通院が必要です。

軽いぎっくり腰の場合は、痛めている筋肉や関節の部分に鍼をすれば速やかに落ち着きますが、何度も繰り返すうちに癖になっているぎっくり腰の場合は、今回紹介した腰方形筋だけでなく、大腰筋や腸骨筋といった腰の深部の筋肉がガチガチに固まっている場合がほとんどですので、これらの筋肉の緊張を緩めなければ改善は見込めません。

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

腰方形筋もですが、大腰筋や腸骨筋は腰と骨盤の深層に位置している筋肉ですので、長い鍼を用いた深鍼治療以外では直接刺激することが難しい筋肉です。

お腹のあたりを指で圧迫する手法を行なっているセラピストもいますが、腸を始めとした内臓が存在していることを考えると本当に刺激が届いているのかは不明です。

大腰筋
腸骨筋

腰だけが痛い場合なら、まだ軽症です。

今回紹介した腰方形筋をはじめとした大腰筋、腸骨筋を痛めてしまうと、鼠蹊部やお尻、お腹、脚にまで痛みや痺れが出現する場合も少なくありません。

大腰筋や腸骨筋への鍼治療は専門的な技術が必要な手法です。

大腰筋や腸骨筋への鍼治療の効果や手法については以下の記事で解説していますので、ぎっくり腰を繰り返している人は是非参考にしてみてください。

大腰筋に対する鍼治療について専門家が詳しく解説します。

腸骨筋に対する鍼治療について専門家が詳しく解説します。

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その他の腰痛については以下の記事をご参照下さい。

60代女性のぎっくり腰に対する鍼治療の実際例

ぎっくり腰に対する鍼治療の実際例(介護職員)

20代男性マッサージ師のぎっくり腰に対する鍼治療の実際例

ほまれ鍼灸院長 富本 翔太

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