肩こりを放置した人間の末路

2025.04.02

肩こりを放置した人間の末路
目次

冬から春先にかけて鍼灸院は少々忙しい。

寒い時期に鍼灸院が忙しくなるのは想像に難しくないだろう。

誰もが寒い冬の時期に、寝違えやぎっくり腰になったことが一度や二度はあるはずだ。

寒いと筋肉が縮こまる。

寒いと筋肉が縮こまる

筋肉が縮こまると筋肉内の血管が絞扼され血流が悪くなり、コリが生じて、それが原因となって痛みやダルさが生じる。

この場合で言う『痛み』とは、いわゆる鈍痛のことであり、ズキズキと鋭い痛みのことではない。

コリによってもたらされる痛みは鈍痛(どんつう)と呼ばれる。

鈍いような、重だるいような、なんというか上手に表現するのが難しい痛みのことである。

指を切ると、みんな急いで薬局に駆け込んで絆創膏を貼る。

お腹が痛くなると、これまた同じく薬局に駆け込んで、胃腸薬を購入して急いで服用する。

コリによってもたらされる痛みも、その他の痛み(鋭利痛など)も同じ『痛み』であるにも関わらず、現代人は皆、鋭利痛にはすぐに対処するのに、なぜか鈍痛は軽視して放置する傾向にある。

肩こりがその代表例である。

世の中、肩凝りを放置している人間が多すぎる。

現代社会において、もはや国民病と言っても過言ではない肩こりだが、『毎日デスクワークだから仕方ない。。』なんて自分自身に言い訳をして、肩こりを放置している人が非常に多い。

確かに、肩こりのような鈍痛はすぐさま命の危険などがもたらされることはないので、放置してしまう気持ちもわからないのではないのだが、肩こりを放置すると、様々な症状の発症リスクが高まることを皆さんは果たして本当に理解しているだろうか。

肩こりを放置してきた人間が取る行動パターンは概ね共通している。

最初から鍼灸院に来院される人なんてほとんどいない。

大体、最初は駅前にあるグループ整骨院や整体院に来院される場合がほとんどだ。

駅前にあって、いつも人がいるから。

期間限定で料金が安かったから。。

大体の来院理由はこんなところであろう。

ここで軽くマッサージやストレッチを受けたり、場合によって施術者からのセールスで背骨や骨盤の矯正を受けることになるが、よっぽど軽症の肩こり以外はほとんど治療効果を感じることができないまま気づいたら数ヶ月が経過することになる。

こういった院で行われている施術が全く効果がないとまでは言わない。

筋肉をほぐしてもらえば心地良いし、バキバキっと矯正されればなんとなく身体が軽くなった気がするのもわからなくもない。

しかし根本的には全く状況が変わっておらず、このままではいつまで経っても永遠に通院しなければいけないと思って、この時点でようやく他の方法を試してみるかと思い、鍼灸院で鍼を受けることが一つの選択肢として候補に登ってくる。

大体、肩こりを放置してきた人も放置したくて放置したわけではないことは重々承知であるが、承知すればするほど治りが悪くなるし、肩こり以外にも様々な症状が付随して発生してきてしまう。

筆者は鍼灸師という職業柄、これまで非常に多くの肩コリストの方々と向き合ってきたが、長年肩こりを放置してきた方は十中八九、何かしらの疾患を発症している。

今回はごく一部ではあるが、肩こりを放置しているが故に起こりやすい代表的な首〜肩の疾患を紹介しているので、自分の症状に当てはまるものがあれば、これ以上肩こりを放置して手遅れになる前に何らかの対策を取るようにしてほしい。

当院のような鍼灸院は重度の肩コリストが最後に来られる駆け込み寺であると自負している。

緊張型頭痛・片頭痛

肩こりを放置していることによって、発症する最も多い症状が頭痛だ。

頭痛

緊張型頭痛はその代表例である。

肩こりとはつまり首〜肩周りの筋緊張のことであるから、緊張型頭痛とは読んで字の如く、肩の筋肉の緊張を基盤として発症する。

最も多いのは後頭部〜後頸部の後頭下筋群が存在する辺りを締め付けるような鈍痛であるが、それ以外にも、首の筋肉が硬くなることによって、後頭部の神経が圧迫を受けて発症する後頭神経痛や、同じ原因によって発症する側頭部痛を発症する人も非常に多い。

筋緊張性頭痛の原因の一つである後頭下筋

後頭神経痛は厳密にいえば、頭痛ではなく末梢神経の絞扼痛ではあるが、頭痛と認識している人が多いことに加えて、発症原因も緊張型頭痛と似通っていることから、ここでは頭痛の一種として扱っている。

また、片頭痛も緊張型頭痛を基盤として発症することが非常に多いことから、肩こりを放置することによって発症するリスクのある症状と言っても差し支えないだろう。

片頭痛はこれまで緊張型頭痛と相反する特徴を持つ、全くタイプの異なる頭痛と考えられてきたが、現在においては片頭痛患者の多くが緊張型頭痛と頑固な肩こりに悩まされていることがわかっている

一概には言えないが、肩こりを基盤として発症する頭痛に鍼治療は即効性がある。

頑固な肩こりを基盤としている場合は数回の治療が必要となるが、緊張型頭痛や後頭神経痛であれば1〜3回程度の治療で痛みが大幅に軽減することも珍しくない。

当院での緊張型頭痛に対する鍼治療の様子をまとめたブログがあるので、肩こりや首こりと頭痛に悩まされている人は一つの参考に、是非一度目を通してみてほしい。

緊張型頭痛に対する鍼治療の内容については以下の記事を。

緊張型頭痛に対する鍼治療について

緊張型頭痛で当院に来院された患者の実際の通院例については以下の記事をご参考ください。

緊張型頭痛に対する鍼治療実際例『30代男性会社員』

片頭痛と緊張型頭痛では鍼治療の方法も少々異なる。

片頭痛でお困りの方は以下の記事をご参照ください。

片頭痛に対する鍼治療について

胸郭出口症候群

聞きなれない言葉ではあるが、胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)も慢性的に肩こりを抱えている人に多く発症する肩こり付随症状の一つである。

胸郭出口症候群

肩こりを放置していると、いつの日からか腕に痺れが出てきたタイプはこの症状の可能性が高い。

胸郭出口症候群は10〜30代の特に若い女性に多く見られる症状なので、年齢によってもある程度分別することが可能である。

代表的な症状は、首〜肩にかけてのコリを始めとして、肩甲骨の間の痛みや痺れ、腕の痺れ、脱力感、重だるい感覚、冷えなどが挙げられる。

姿勢不良が原因となることから、デスクワークの方は勿論だが、その他では教師や美容師、窓拭きの仕事などで腕を長時間挙げる仕事に従事されている人に多くみられる。

腕を長時間挙げる仕事

加えて、日常生活において測る機会がないので気づかない人がほとんどではあるが、握力が低下することも特徴の一つである。

上記のような特徴を持つ職業に従事していて、最初は肩こりだけだったのが、いつの間にか肩甲骨の間や腕の方にまで痛みや痺れ違和感が出てきた方は、この症状の可能性がかなり高いと言っても過言ではないだろう。

放置する人は流石にいないと思うが、腕に痺れや違和感が出た状態でも治療せずに放置していると、脳の痛みを感じる機能がバグを起こしてしまい、痛みがさらに慢性化する複雑な状態になってしまうことから、重度の肩こりをお持ちの方で、肩甲骨周囲や腕にまで違和感が出てきた場合は早めにしかるべき医療機関にかかることをおすすめする。

ちなみに、他の疾患との見極めが大切なので一概には言えないが、首肩こりを基盤として発症しているタイプの胸郭出口症候群であれば数回の鍼治療において痛みの程度を大幅に軽減させることは決して難しい話ではない。

胸郭出口症候群に対する鍼治療の実際例『40代女性主婦』

数回繰り返し鍼治療を行うことで痛みや痺れは大幅に軽減するが、問題の根本原因となっている姿勢などを改善しない限りは完治が難しい症状なので、必要に応じて肩甲骨周辺のトレーニングを行うことが必須となる。

頸椎症性神経根症

胸郭出口症候群と同じく腕に痺れが出る症状の一つに頚椎症性神経根症がある。

頸椎症とは、要は加齢による頸椎の変形である。

加齢による頸椎の変形

変形があるからといって必ず痛みや痺れが出るわけではないが、頸椎が変形することによって、首から腕に走る神経の通り道が狭くなってしまうなどの悪影響が発生し、神経痛が発症する。

症状としては先に紹介した胸郭出口症候群と非常に似通っている。

どちらも同じ首の神経に異常が起きるので当然といえば当然であるが、特徴としては頸椎症性神経根症が首の動きによって痛みや痺れが悪化するのに対して、胸郭出口症候群は腕や肩の動きによって悪化するのが多い。

また変形を基盤とする神経根症は中高年以上に発生するのに対して、胸郭出口症候群は若い女性に発生することがほとんどである。

肩こりを長年放置してきて、腕に痺れや痛みを感じるようになってから整形外科を受診されて、加齢による頸椎の変形によって発生している症状ですねと医者に言われ、半ば諦めている人が多いようですが、適切に鍼をすれば治療効果が期待できる疾患である。

痺れる場所によって鍼をする場所は異なるが、概ね頸椎の下部を中心に施術を繰り返すことになる。

頸椎症性神経根症に対する鍼治療について

うつ病や自律神経疾患

心身一如という言葉があるように、肉体と精神の状態は互いに密接に関わり合っている。

『大事な試合やテストの際は緊張でいつものように体が動かなくなる。』

誰しも一度や二度はこのような経験をしたことがあると思う。

最近ではうつ病患者の大半が重度の慢性的な首こりや肩こりに悩まされているという報告も出ている。

肩こりはうつ病と関係する

肩こりがキツくなるとうつ病が発症しやすくなるといった単純な問題ではないが、うつ病患者のほとんどが重度の肩こりに悩まされていることは間違いのない事実なので、肩こりを放置し続けていると、精神系の疾患を発症する可能性があることを念頭に置いておく必要があるだろう。

うつ病や自律神経疾患を鍼で治療する場合は、他の症状に比べて治療期間や回数は増える傾向にはあるが、根本の原因となっている首や肩の筋肉の緊張を適切に緩めることができれば、改善することは十分可能である。

マッサージではどうにもならない肩こりなら

今回紹介した肩こりに付随して発症する症状はあくまで一例にしかすぎない。

このほかにも、歯の痛み、耳鳴り、眼精疲労、顎関節症など、肩こりを放置するが故に発症する症状は多くあるし、一つだけでなく二つ以上の症状を併発するパターンも少なくない。

肩こりがあるからといって、必ずしも上記の症状が発症するわけでは勿論ない。

しかし、上記の症状に悩まされている方のほとんどが、慢性的な肩こりに悩まされている経験のある人がほとんどであることから、肩こりを放置することが、皆さんが思っている以上にどれだけリスクのあることかが理解していただけたのではないかと思う。

軽い肩こりであれば、ジムで身体を動かしたり、たまにマッサージに行ったりするくらいで十分改善が期待できるかと思うが、年単位で悩まされている頑固な肩こりの場合は、これらの軽い刺激だけでは深部に存在するコリをほぐすことは到底不可能である。

そのような状況に陥ってしまっている人におすすめしたいのが、当院でおこなっている深鍼治療だ。

深鍼治療を安全に行なってくれる鍼灸院の数は日本全国においてもそれほど多くないことから、大阪を始めとした関西近辺で頑固な肩こりに悩まされている人は、是非一度当院でおこなっている深鍼治療を試してみて欲しいと思う。

深鍼治療の一例

鍼特有の刺激が苦手な人にはオススメできないが、ズシンと深部に響く鍼治療は、きっと他のどんな施術方法よりも治療効果が期待できるに違いない。

大阪で深鍼治療を受けるなら是非ほまれ鍼灸院にご相談ください。

深鍼治療について詳しくはこちらをご参照ください。

鍼を深く刺す深鍼治療の効果と安全性について

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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