ギックリ腰に対する鍼治療の実際例『介護職員』

ギックリ腰に対する鍼治療の実際50代女性介護職
目次

院長の富本 翔太です

こんにちは、豊中市のほまれ鍼灸院の富本です。

先日、来院されたギックリ腰患者さんの治療が終了したので、同じくギックリ腰に悩まれている方の参考になればと思い、実際の治療例や通院ペースについての記事を執筆しました。

筋筋膜性の腰痛とそれに付随する上殿皮神経障害様の骨盤付近の鈍痛と違和感が主訴の患者さんです。

患者データ

  • 50代女性
  • 介護職
  • 慢性腰痛あり
  • 整形外科にてレントゲン撮影済み

今回の患者さんは介護職に従事されている方です。

職業柄、重たい物や人を支える機会が多いようで、慢性腰痛から急性腰痛を発症され当院に来院されました。

当院に来院される前に整形外科を受診し、レントゲンを撮影したが大きな異常は指摘されず。

理学療法士によるマッサージや牽引器、ウォーターベッドによるリハビリを数回受けたようですが、ほとんど痛みが改善しないどころか、リハビリで背中を伸ばす動きをされた後から、痛みが増悪したとのことでした。

元々慢性腰痛の際は右の腰に痛みがあったようですが、現在は左側に痛みが出ており、左の大腿部の外側にまで鈍痛が出現しているようです。

腰痛と同時に大腿部の外側に痛みや違和感がある場合は外側大腿皮神経炎が考えられます。

外側大腿皮神経炎に対する鍼治療について

痛みの場所は左の骨盤あたりですが、直接押さえてみても痛みや嫌な感じは出現しません。

腰を反らす動きや左側に腰を傾ける動きを行った際に腰や左脚のあたりに痛みや鈍い感覚が出現しています。

・来院時の痛みの確認データ

  • 安静時痛(+)
  • 夜間痛(+)
  • 屈曲時痛(++)
  • 腰椎伸展(++)
  • 腰椎伸展+左側屈(++)
  • 腰椎左側屈(+)

腰痛で脚にまで痛みや痺れが出る疾患には、腰椎椎間板症や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、仙腸関節痛、椎間関節性疼痛、筋筋膜性腰痛など様々ありますが、今回の患者さんの場合は当院に来院される前に整形外科にて医師の診断を受けており、脊柱の構造の異常によって発症する疾患は否定されているので、この時点で非常に高い確率で筋筋膜性腰痛か椎間関節性腰痛、もしくは大腰筋の過度の緊張によるギックリ腰であることが予想できます。

初回

初回の治療では左側の腰部の多裂筋と大腰筋を中心に鍼治療を実施しました。

初回

治療体勢はうつ伏せで治療時間は合計で30分弱です。

ギックリ腰の治療は横向きの体勢で行う場合が多いですが、今回の患者さんはうつ伏せには問題なくなれるとのことだったので、うつ伏せで実施しています。

左の大腰筋に鍼を打った際に左大腿部外側に、多裂筋の下部に打った際に最も痛みが出現している左の上後腸骨棘の部分に響きが出現しました。

今回の患者さんは鍼の響きが好きではないため、初回から強い刺激は行わず軽めに実施しています。

鍼治療直後は、鍼の響き感が強く疼痛誘発動作の変化を比較しようにも十分に比較することができないので、2〜3日後に来院するように伝えてこの日は終了。

2回目

3日後に来院。

前回の治療後、当院からの帰宅途中はまだ痛みが残っていたが、夕方頃には6割型痛みが軽減した。

(初回来院日は午前中に来院されています。)

左の太ももの鈍痛や違和感は消失しており調子が良かったが、昨日から右の腰に痛みを感じるようになっており、現在は左側の腰痛は感じておらず右側のみ痛みが出現している状態。

右の脛の辺りにも違和感があるとのコメント。

脛に痛みや違和感が出る症状としては椎間板ヘルニアや神経根症、もしくはお尻の小臀筋による筋膜性の関連痛が疑われます。

・初回→2回目までの経過

  • 痛みの程度自己評価(10)→(4
  • 安静時痛(+)→(
  • 夜間痛(+)→(
  • 屈曲時痛(++)→(
  • 伸展時痛(++)→(
  • 伸展+左側屈痛(++)→(
  • 左側屈(+)→(

ギックリ腰の治癒過程ではあるあるですが、片側の痛みが軽減してきた後に、逆側の痛みを強く感じるようになる場合があります。

今回の場合で言うと、急性で発症したギックリ腰の痛みが軽減したことから、元々あった右腰の慢性腰痛の痛みが目立っている状態であることが予想できます。

触診上、緊張が特に目立っていた右側の多裂筋、大腰筋、腰方形筋に鍼治療を実施しました。

2回目

治療体勢はうつ伏せのみで治療時間は約30分間程度。

多裂筋に鍼をした際に、現在感じている腰痛に似ている響きの感覚が出現しました。

初回よりも使用する鍼の本数を少し増やしています。

数日後に来院するように伝えて2回目の施術は終了。

3回目

3日後に来院。

・2回目→3回目までの経過

  • 痛みの程度自己評価(4)→(2
  • 安静時痛(−)→(−)
  • 夜間痛(−)→(−)
  • 屈曲時痛(+)→(
  • 伸展時痛(+)→(
  • 伸展+左側屈痛(+)→(
  • 左側屈痛(−)→(−)

おおむね痛みの動作は消失しており、痛みの程度も自己評価で非常に低くなっています。

ただ、完全に痛みが無くなったわけではなく、やはり右腰の骨盤やや外側辺りに違和感が残っているようです。

この患者さんは下位腰椎の伸展がかなり強い、いわゆる反り腰です。

その影響もあって腰部の多裂筋や脊柱起立筋が非常に硬くなっており、これらの部位が緊張することによって出現する上臀皮神経の障害とも考えられます。

脊柱起立筋の緊張を緩めることを引き続き第一目標において、腰部の脊柱起立筋、多裂筋、右側の腰方形筋に鍼を実施しました。

3回目

右側の脊柱起立筋に鍼をした際に、右骨盤付近の痛みと違和感が再現されるような響き感あり。

治療体勢はうつ伏せのみで治療時間は置鍼時間込みで約30分。

4回目

4日後に来院。

痛みの程度は自己評価で1/10まで軽減。

当初の訴えであった左側の腰痛、左側の太ももの鈍痛、右脛の違和感は消失。

右上後腸骨棘付近に少し違和感があるのと同時に、骨盤全体が冷えたような感じがするとのコメント。

・3回目から4回目までの経過

  • 痛みの程度自己評価(2)→(1
  • 屈曲痛(−)→(−)
  • 伸展時痛(−)→(−)
  • 伸展+左側屈時痛(−)→(−)
  • 左側屈時痛(−)→(−)

引き続き、脊柱起立筋、多裂筋、腰方形筋、大腰筋、中臀筋に鍼を実施。

4回目

置鍼と電気鍼治療を実施しており、治療時間は合計で30分間程度。

腰方形筋や大腰筋の鍼はそれほど響かないが、脊柱起立筋に鍼をした際に、右腰の下部〜骨盤周囲の鈍痛と違和感が再現されるような感覚が出現。

だいぶ痛みの程度が軽減したので、少し感覚を空けて来院するように伝えて4回目の施術は終了。

5回目

5日後に来院。

前回来院日から調子が良く痛みも目立って出ていなかったが、本日仕事にて中腰作業を長時間行った結果、少し痛みが再燃してしまい、現在は前回来院日よりも痛みの程度が強まっているとのコメント。

・4回目→5回目までの経過

  • 痛みの程度自己評価(1)→(5
  • 屈曲時痛(−)→(
  • 伸展時痛(−)→(−)
  • 伸展+左側屈時痛(−)→(−)
  • 左側屈時痛(−)→(
5回目

痛みが再燃してきているものの、下肢の鈍痛や違和感は出現しておらず、腰を伸ばすこともできるので大腰筋の関与は少なく中腰姿勢を長時間続けた結果、右の脊柱起立筋に過度の負担がかかったことが予想できます。

右の脊柱起立筋を中心に鍼を実施しています。

治療時間は30分弱でうつ伏せのみで終了。

6回目

5日後に来院。

前回の治療後、翌日くらいに痛みの程度は大幅に軽減。

現在は痛みはほぼ無くなっているが、右下部の多裂筋に違和感が残っている状態。

これまで行なっていた立位での腰椎の疼痛誘発動作は全て消失しているが、体幹を左に側屈した際(左に体を傾けた際)に右腰に少し伸長感が出現するようです。

・5回目→6回目までの経過

  • 痛みの程度自己評価(5)→(0)
  • 屈曲時痛(+)→(−)
  • 伸展時痛(−)→(−)
  • 伸展+左側屈時痛(−)→(−)
  • 左側屈時痛(+)→(−)

伸長感が出現するのは前回と同じく右の脊柱起立筋です。

触診上でも筋緊張はまだ残っているので、引き続きこの部分を中心に右の多裂筋、大腰筋、腰方形筋、中臀筋などに鍼を実施。

6回目

うつ伏せで治療時間は合計で30分程度にて終了。

終了

6回目の治療終了後、予約をとっていただいていましたが、数日後に電話があり、腰痛と骨盤周囲の違和感が完全に消失したとのことで予約をキャンセルして一旦治療終了となりました。

豊中市でぎっくり腰に対する鍼治療なら

ポジショントークにはなりますが、控え目に言ってもギックリ腰に対しては鍼治療が最も有効な手法かと思います。

腰の深部の大腰筋が過度に緊張している場合は、深鍼治療で直接刺激を加えることで、曲がったまま伸びなくなった腰でも伸ばすことが可能です。

長い鍼を使用する深鍼治療は痛いと思われている人が多いようですが、ギックリ腰の痛みと比べれば大したことありませんし、鍼の響きは大多数の人が心地よく感じる感覚ですので、くしゃみや咳が腰に響いたり、座ってから立ち上がる際に腰が伸びにくく感じている方は、早めに試してみるのが良いと思います。

その他、腰の筋肉の脊柱起立筋が筋違えを起こしている状態や、腰の関節が捻挫している状態であれば、特に長い鍼を使用しなくても、数本の鍼と電気鍼治療でほとんどの場合、数回で良くなります。

どうしても鍼が怖いという人に無理に勧めるつもりは一切ありませんが、『とにかく良くなるなら多少痛くてもなんでも良い』という人は数回だけ騙されたと思って鍼治療を試してみてはいかがでしょうか?

当院に来院され治療終了となったギックリ腰患者さんのほとんどが、『最初から鍼に来ておけばよかった』とのコメントを残し卒業されていきます。

豊中市でギックリ腰に対する鍼治療なら、阪急豊中駅から徒歩すぐのほまれ鍼灸院にご相談下さい。

ほまれ鍼灸院

ギックリ腰で来院された患者さんは非常に多く、その全てを記事にするのは多すぎて物理的に不可能なのですが、時間のある時に、実際の治療内容や通院頻度などの参考になればと思い、このような記事を執筆しています。

ギックリ腰や慢性腰痛でお困りの方は以下の記事も同時にお目通ししただければ参考になる点があるかと思います。

60代女性のギックリ腰に対する鍼治療の様子

20代男性マッサージ師のギックリ腰に対する鍼治療の実際の経過と様子

腰方形筋のギックリ腰に対する鍼治療の様子

ギックリ腰に関する総論的な内容については以下の記事をご参照ください。

ギックリ腰に対する鍼治療について

ほまれ鍼灸接骨院院長 富本 翔太

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